増える「IoT産業機器」の開発を支援、2社統合で誕生したOKIネクステック:組み込み開発 インタビュー
IoT(モノのインターネット)の拡大により、産業用機器でも無線機能通信を組み込んだ製品開発などが広がりつつある。こうした動きを支援するため2021年4月に新たに誕生したのがOKIネクステックである。新たに誕生した同社の役割と今後の方針について、代表取締役社長を務める野末正仁氏に話を聞いた。
IoT(モノのインターネット)の拡大により、産業用機器でも無線機能通信を組み込んだ製品開発などが広がりつつある。こうした動きを支援するため2021年4月に新たに誕生したのがOKIネクステックである。
OKIネクステックは2021年4月に沖電気コミュニケーションシステムズと長野沖電気が統合して誕生。従来、産業系領域での電子機器の受託開発を担い、さまざまなCPUなど電子デバイスの取り扱いを特徴とした長野沖電気と、無線関連技術や電源部分の開発を行ってきた沖電気コミュニケーションシステムズの強みを生かし、IoT時代に最適な、DMS(Development&Design Manufacturing Service)およびEMS(Electronics Manufacturing Service)事業を展開する。
新たに誕生した同社の役割と今後の方針について、代表取締役社長を務める野末正仁氏に話を聞いた。
IoT環境に最適な機器開発を支援
MONOist 新たに活動を開始したOKIネクステックの強みについて教えてください。
野末氏 もともと長野県小諸市を拠点とする長野沖電気(NOK)は電子機器や電子装置の設計や製造を中心とし、産業用機械の制御電子部品などのEMSやDMSを行ってきた。基板実装ラインも8ライン持ち、電子基板に強みを持っていた。一方で、埼玉県所沢市に拠点を置く沖電気コミュニケーションシステムズ(OCM)は電源や無線機器の電子装置設計や製造を行う他、機器の組み立てなどのプロセスに強みを持ってきた。
同じ電子機器の設計や製造を支援するEMSやDMS事業だが、分野でいえば、NOKは産業向け、OCMは無線や電源を得意とする他、医療向けや社会インフラ向けを強みとするという違いがあった。また強みとするモノづくり領域も、NOKは電子基板の設計と実装、OCMはどちらかといえば組み立て生産領域という異なる強みを持っていた。
OKIネクステックでは、これらを組み合わせることで、新たな価値を顧客となる装置や機器のメーカーに提供できる。製品企画や仕様策定から、開発、設計、量産製造、保守まで一貫してサービスを提供できる他、2社の統合によりカバー範囲が広がることが強みだ。
MONOist 例えば、両社の統合はどういう場面で効果を発揮すると考えていますか。
野末氏 まずは単純にカバー範囲が広がるという点がある。電子基板や電源、無線機能など、従来は個々で受注をし、開発や生産を請け負ってきた。しかし、電子機器のモジュール化などが進む他、それぞれが影響を与え合う部分もあり、顧客となる機器メーカーにとっては、これらを組み合わせて委託することで、開発負荷の低減や、生産品質の向上などのメリットが得られる。また、部品調達力も高まるために、コストメリットなども発揮できるだろう。
特に最近は機器のIoT化が進む中で、産業系機器でも稼働状態の遠隔監視や、メンテナンスのための状態監視などのニーズが高まっており、無線通信機能を組み込みたいというニーズが生まれている。無線通信機能を追加する後付けユニットを開発する動きなども増えている。こうした新たな動きに対し、産業系電子基板の受託の際に無線機能についても合わせて開発を請け負うことで、ノイズ対策などを行えたり、電源も含めて省スペース化できたりする。こうした利点を提供できるようになる。
車載領域を新たな事業の柱に
MONOist 新体制は始まったばかりですが、具体的に現在はどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。
野末氏 現在はまずは、それぞれの顧客にOKIネクステックとしての新たな価値をあらためて説明している段階だ。それぞれの利点を組み合わせた提案はこれからになるだろう。国内の地域的に、強いところや弱いところがあるので、まずはそれぞれの強いところを組み合わせて、OKIネクステックとしての立ち位置を作っていく。また2社だけでなく、OKIグループとして、他のグループ企業も含めた総合的な価値提供も進めていく。
MONOist 今後の取り組みを教えてください。
野末氏 5G環境の普及により、無線通信技術を採用した機器の普及は間違いなく増える。直接的にはOKIネクステックで5G関連機器そのものに取り組むことではないが、実際にこうした環境を見据えたエンドポイントでの無線機能を前提とした機器開発の依頼なども増えつつある。Wi-Fi機能や920MHz帯マルチホップ無線の組み込みボード開発などは実際に増えている。このような技術は“枯れた“技術だと見られがちだが、産業用途などで安定的に使用できる信頼性を確保するには、さまざまなノウハウが必要になる。こうした機器の開発や生産の支援で役立てると考えている。
コロナ禍などを通じて、産業機器でも自動化や遠隔化がキーワードとなっており、あらゆる産業機器と通信技術との組み合わせも必須となってきている。こうした状況で、各機器メーカーでは開発の負荷はさらに高まってくるため、われわれの役割も高まっていると感じている。
また、今後に向けては車載用途なども拡大していく。IPCの車載向け規格の認証取得が必須となるが、2021年度下期中には取得見込みだ。既に引き合いもあり、準備が進めば需要はあると考えている。車載もエレクトロニクス化が進んでおり、開発するボードの数なども急速に増えている。これらの開発を支援していく。制御に関わるところは難しいが、それ以外の領域での電子基板の開発や生産などで入っていけるようにしたい。
現状では、産業機器領域の取引が一番多く、次いで、社会インフラ領域、情報通信領域、医療機器領域となっているが、車載系は時間がかかるが、実績を作りながら、新たな事業の柱としていく。
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