ドローン用緊急パラシュートを日本化薬が開発、空飛ぶクルマにも技術展開:Japan Drone
日本化薬は、「Japan Drone 2021」において、ドローンが故障した際の落下速度を低減するドローン用緊急パラシュートシステム「PARASAFE」を披露。さらに、空飛ぶクルマ用となる「T2コンセプト」も公開した。
日本化薬は、「Japan Drone 2021」(2021年6月14〜16日、幕張メッセ)において、ドローンが故障した際の落下速度を低減するドローン用緊急パラシュートシステム「PARASAFE」を披露した。まずは、総重量25kgのドローンに対応する品種を同年12月に発売する予定。この品種は自律制御システム研究所(ACSL)のドローン機体に対応するという。この他、総重量15kgと100kgに対応する品種も開発しており、同年9月に試作モデルをリリースする。さらに、総重量500kgを想定する空飛ぶクルマ用の「T2コンセプト」も公開した。
空中を飛行するドローンは、突風やバッテリー切れなどさまざまな理由によって落下する可能性がある。業務用で用いられるドローンは重量が重いこともあって、落下した場合に大きく破損してしまう。数百万円以上する高価な業務用ドローンが破損するだけでなく、落下場所によっては使用者以外に被害を及ぼす可能性も出てくる。
PARASAFEは、何らかの理由で故障したドローンが落下する際にパラシュートを開くことで落下速度を低減して安全に降下できるようにするシステムだ。日本化薬はエアバッグのガス発生装置であるインフレータの大手サプライヤーであり、PARASAFEのパラシュートを広げる射出装置にもその技術が応用されている。
総重量25kgに対応する品種の外形寸法は、外径130mm×高さ154mm、重量1kg。ネジでドローンの上部に固定して使用する。ホバリング状態からプロペラを停止してドローンを落下させて、手動でパラシュートを展開する信頼性試験を50回行い、その全てでパラシュートが展開することを確認している。また、飛行中のドローンの重大な故障を検知して、プロペラを強制停止し自動でパラシュートを展開する「ATS(自動トリガーシステム)」の開発も進めているという。
総重量25kgの品種は、発売当初は数十万円の価格で販売する予定だ。「機体価格が数百万円になる業務用ドローンの万が一に対応できることを考えれば、十分な価値があると考えている。将来的に量産規模を拡大できれば10万円台での提供も可能だろう」(日本化薬の説明員)という。
さらに、1人乗りクラスの小型の空飛ぶクルマ向けを想定した緊急パラシュートシステムであるT2コンセプトも開発中だ。パラシュートの収容サイズは幅45cm×奥行き39cm×高さ15cmで、パイロットシュートを使って大型のメインパラシュートを引き出す2段構成となっている。着地時の衝撃を和らげるエアバックシステムもオプションとして用意している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「空飛ぶクルマ」の現在地、果たすべき役割と課題
半導体製造技術の展示会「SEMICON Japan(2019年12月11日〜13日、東京ビッグサイト)」で開催されたセミナー「SMART TransportationフォーラムII」に経済産業省 製造産業技術戦略室長の藤本武士氏が登壇。「空の移動革命に向けた政府の取り組み」をテーマに講演した。 - 1万℃の高熱から貴重なサンプルを守れ!〜再突入カプセルの仕組み【前編】〜
いよいよ、小惑星探査機「はやぶさ2」が帰ってくる。2回のタッチダウンで取得したサンプルを地球に送り届ける最後の関門となるのが地球大気圏への再突入だ。そのために使われる「再突入カプセル」とは、どのような装置なのだろうか。 - 2つの改良でより確実なサンプルリターンへ〜再突入カプセルの仕組み【後編】〜
いよいよ、小惑星探査機「はやぶさ2」が帰ってくる。2回のタッチダウンで取得したサンプルを地球に送り届ける最後の関門となるのが地球大気圏への再突入だ。そのために使われる「再突入カプセル」は、はやぶさ初号機と比べ主に2つの点で改良が施されている。 - エアバッグの前に付く「SRS」の意味を理解しよう
今や「装備されていて当たり前」の安全システムとなったエアバッグについて、今回から3回に分けて解説する。エアバッグの前に付く「SRS」には、エアバッグの根幹を成す極めて重要な意味があった。 - エアバッグ展開時の衝撃力はウサイン・ボルトの全力タックルと同じ
自動車の安全システムとして知られるエアバッグだが、エアバッグが展開する際のさまざまなリスクはあまり知られていない。エアバッグ3部作の最終回である今回は、エアバッグ展開のリスクやエアバッグ搭載車についての注意点を紹介する。 - 成層圏から人間がマッハ1.2でスカイダイブ! 耐えろ
気の遠くなるような高さから人間が超音速でダイブした! ――米国フロリダ州オーランドで開催中である米ソリッドワークスのプライベートイベント「SolidWorks World 2013」で、Red Bull Stratosを仕切った技術者らが登場し、その開発について語った。