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「空飛ぶクルマ」の現在地、果たすべき役割と課題SEMICON Japan 2019(1/2 ページ)

半導体製造技術の展示会「SEMICON Japan(2019年12月11日〜13日、東京ビッグサイト)」で開催されたセミナー「SMART TransportationフォーラムII」に経済産業省 製造産業技術戦略室長の藤本武士氏が登壇。「空の移動革命に向けた政府の取り組み」をテーマに講演した。

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 半導体製造技術の展示会「SEMICON Japan(2019年12月11日〜13日、東京ビッグサイト)」で開催されたセミナー「SMART TransportationフォーラムII」に経済産業省 製造産業技術戦略室長の藤本武士氏が登壇。「空の移動革命に向けた政府の取り組み」をテーマに講演した。

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経済産業省 製造産業技術戦略室長の藤本武士氏

 世界中で自動車メーカーや航空機メーカー、ベンチャー企業など、さまざまなプレイヤーが人を乗せて移動できる「空飛ぶクルマ」のプロジェクトを立ち上げ、社会実装に向けた研究開発や議論を進めている。

 講演で藤本氏は「空飛ぶクルマは、遠い将来の話ではなく明日実現するかもしれない位置付けのものである。実用化に向けた取り組みを進めていきたい」と強調。海外の空飛ぶクルマ開発の状況や、日本における現状と課題、今後の取り組みの方向性について紹介した。

空飛ぶクルマの役割と活用方法

 空飛ぶクルマは、捉え方によってはドローンやヘリコプターが対象に入る場合もあるが、求められる機能として、電動、自動操縦、垂直離着陸などが挙げられている。これらの機能により、機体や運行、インフラにかかるコストが大幅に下がり、速くて安く、便利な人とモノの移動が実現可能となる。

 活用方法の1つ目としては、都市内での移動が見込まれている。地上の道路の混雑に対して、空を飛ぶことにより渋滞を緩和したり避けたりすることができ、短い時間で移動が可能となる。2つ目が災害時での活用である。水害や地震で陸の孤島になる場合や、島が被害を受けた場合に医者や被災者、物資を運ぶケースが考えられる。3つ目が離島や山間地域での使用である。過疎地で公共交通機関を維持できない地域が増えているが、そうした場所でも小規模で容易に移動できることになればメリットは大きい。その他、観光の需要創出にも貢献する。空港から観光地に移動するケースや、空から景色を楽しんでもらうことも近未来には実現が予測されている。

空飛ぶクルマの開発状況

 空飛ぶクルマの開発競争は国内外で加速している状況である。国内ではCARTIVATOR(カーティベーター)、PRODRONE(プロドローン)、テトラ・アビエーションなどのベンチャー企業(団体)が取り組んでいる。海外勢では中国のEHang(億航、イーハン)が有人飛行に成功し、Bell Helicopter(ベルヘリコプター)、Boeing(ボーイング)、Airbus(エアバス)、Volocopter(ボロコプター)なども開発を進めている。

 最近の状況では、カーティベーターが2018年12月に屋外の飛行試験に成功。さらに、NECが2019年8月、試作機の浮上試験を実施した。同社は空飛ぶクルマの移動環境に必要となる、交通整理や機体間・地上との通信などを支える管理基盤の構築に向けた取り組みを本格的に開始している(※)

(※)関連記事:NEC自社開発の空飛ぶクルマが飛んだ、ただし「機体ビジネスには参入せず」

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NECの“空飛ぶクルマ”の浮上実験の様子(クリックして拡大)

 海外ではUberがライドシェアの構想を掲げている。2020年代にはエアタクシーを実用化し、2023年にはサービスの提供を開始。2025年にサービスを5都市に拡大し、1都市当たり300〜500の機体を運用することで、1日当たり6万人の乗客を運ぶという構想を立てている(※)

(※)関連記事:Uberの空飛ぶタクシーはヒュンダイがパートナーに、「自動車の信頼性が生きる」

 ドイツのボロコプターは2019年10月にシンガポールで実際に人を乗せ140秒間の飛行(距離1.5km、高さ40m、時速55km)に成功した。このデモフライト時には、発着ポートのモックアップも展示し、発着時の使用環境など、実際に都市で活用するイメージを示した。

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