ソフト更新で走行性能の向上や個人に合わせたチューニング、トヨタがKINTOで:モビリティサービス
トヨタ自動車は2021年6月7日、サブスクリプションサービスの「KINTO」に、ソフトウェア更新で走行性能をアップデートする車両を新たに追加すると発表した。
トヨタ自動車は2021年6月7日、サブスクリプションサービスの「KINTO」に、ソフトウェア更新で走行性能をアップデートする車両を新たに追加すると発表した。新車に買い替えることなく最新の状態を体験できるようにすることで、サブスクリプションサービスの魅力向上や、“愛車”としてクルマが長く愛用される環境づくりにつなげる
対象車両はスーパー耐久シリーズなどに参戦してきた「GRヤリス」で、具体的なアップデート内容は2022年春ごろに公開する。ソフトウェア更新はGRシリーズを取り扱う「GRガレージ」で対応する。
アップデート費用は月額料金に含まれる。月額料金は3年契約で税込み5万4340円から。車両は「GRヤリス“モリゾウセレクション”」という新商品として展開し、トヨタと連携するレーシングチーム「ROOKIE Racing」やモリゾウにちなんだデザインを取り入れている。
現在検討中のサービスとしては、ユーザーの走行データをプロドライバーやエンジニアが分析して、サーキットなどで運転しやすくなるようチューニングするパーソナライズや、空力パーツなどハードウェアの追加がある。KINTOでソフトウェアアップデートの知見を蓄積した上で、GRヤリスを販売店で購入したユーザーへのアップデート提供も検討する。将来的には、安全装備や自動運転システム、燃費向上などソフトウェア更新が収益化に貢献しうる分野にパーソナライズを広げていきたい考えだ。
パーソナライズは学びの多い領域
ソフトウェアのアップデート対象は、エンジンのトルクや出力の特性、4WDシステムの前後輪への駆動力配分、ブレーキの応答、ステアリング特性などを想定している。アップデートに当たって許認可や性能の担保が必要となる他、提供するアップデートの内容を吟味するため、サービス内容の詳細を2022年春の公開とした。
アップデート可能なクルマとしてGRヤリスを選んだのは、スーパー耐久シリーズの参戦前からモータースポーツの知見をタイムリーに市販車に届けたいという思いが社内にあったためだという。また、販売店よりもユーザーとコミュニケーションを取りやすいKINTOでのサービスとして提供することを決めた。
GRヤリスの走行性能をソフトウェアでアップデートするのは、トヨタがかねてより公言している「ソフトウェアファースト」の取り組みの一環でもある。
トヨタ チーフブランディングオフィサー(CBO)の佐藤恒治氏は「これまで、機能のアップデートをクルマに織り込むタイミングは商品改良だったが、そうなるとクルマの進化を体感してもらうには新車を買い続けてもらうしかない。今回の取り組みでは、アップデートのタイミングを早めるスキームを取り入れたい。商品改良の時期に合わせた従来の標準作業やセオリーから脱却し、納期の意識を変えていきたい」と語った。また、一人一人に合わせたパーソナライズは、トヨタにとって学びの多い取り組みになると位置付けている。
トヨタが公開した今回のパーソナライズの紹介動画では、サーキットでのユーザーの走行データからプロドライバーやエンジニアが運転傾向を分析して、ユーザー本人にも運転した感触をヒアリングしながらチューニングを決定する様子や、運転方法のアドバイスを受けてラップタイムを短縮する様子がみられる。
こうした運転データの分析チームを、将来はGRガレージで持てるようにしていきたい考えだ。オンライン経由でパーソナライズに対応できる地域を増やしたり、走行データを蓄積してパーソナライズの作業を自動化したりすることも視野に入れている。
クルマ好きのためだけのサービスではない
CBOの佐藤氏は、今回のサービスが安心安全な運転を前提にしたサービスであることを強調した。
「トヨタとしては全てのクルマの安心安全があって、そこに加えて運転の楽しさがあると考えている。今回の発表はモータースポーツ起点で、クルマ好きのためのサービスだと思われるかもしれないが、あくまでも全てのクルマに安心安全を提供することが念頭にあってのサービスだ。スポーツでも、自分の癖や傾向に合わせて道具にも工夫しながら楽しむ段階があり、自分と道具が切磋琢磨して理想のプレイに近づく側面がある。クルマも同じで、人とクルマが成長しながら安心安全なモビリティ社会を実現していくべきだ。安心安全に運転しやすいように、一人一人にクルマを合わせていくことで、成長につながるのではないか。一人一人にクルマを合わせることができるのは、ソフトウェアファーストだからこそだ。ハードウェアの進化に頼るだけでなく、ソフトウェアが進化をリードするからこそ提供できる付加価値があると考えている」(佐藤氏)
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