トヨタは2030年の電動車販売を550万台から800万台に、HEVとPHEVはEV走行がカギ:電気自動車(2/2 ページ)
トヨタ自動車は2021年5月12日、オンラインで会見を開き、2020年度(2021年3月期)の通期決算と2021年度(2022年3月期)の業績見通しを発表した。
2030年の電動車販売台数を上方修正
オンライン決算会見で、トヨタ自動車 執行役員の長田准は「目標はどの電動パワートレインを何パーセントにするかはではなく、2050年にカーボンニュートラルを達成することであり、最終的にクルマを選ぶのはユーザーなので、あくまでトヨタの中での目標」と前置きした上で、2030年の電動車の販売比率や台数の見通しを示した。HEVやPHEVも含めたトヨタの電動車の販売台数は、2030年にグローバルで800万台とした。このうちEVとFCVが200万台だという。これまでの計画では、2030年に電動車の販売を550万台とし、このうちEVとFCVは100万台としていた。
各地域のEV・FCVの比率は、日本が10%、北米が15%、欧州が40%、中国が2035年に50%と見込む。HEVやPHEVも含めた電動車の比率は、日本で95%、北米が70%、欧州と中国が100%とした。2030年時点では車両価格やインフラがネックになり、EVの大幅な普及は難しいとみている。HEVやPHEVはEVと比べて車両価格が安いだけでなく、駆動用モーターのみで走行する「EV走行」によってカーボンニュートラルに貢献するという。
トヨタがHEVやPHEVの走行データを調べたところ、HEVの場合は使用時間の半分がエンジンの止まった状態で、PHEVの場合は、エンジンが止まっている時間の比率が7〜8割まで上がる(車速ゼロの時間も含む)。長田氏は「HEVやPHEVのEV走行が長くなり、エンジンが止まる時間が増えている。コネクテッド技術が進化すれば、状況に応じてEV走行を増やすということも考えられる」とHEVとEVのCO2排出削減効果を強調した。
グローバルで電動車800万台を実現するには、トヨタだけでなく電池などのサプライヤーも含めて生産体制を整えなければならない。電池の供給は足元の30倍に拡大する必要がある。「現在のトヨタ車向け電池の生産量は6GWhだ。また、今の2ラインのEV生産を60ラインに増やす必要がある。これまでHEV向けに20年かけて拡大してきた生産体制を、今後10年で同じだけ拡大するイメージだ。量とスピードを確保するには、複数のパートナーとの連携が欠かせない」(長田氏)。
その中で、トヨタとパナソニックが立ち上げたプライムアースEVエナジーやプライムプラネットエナジー&ソリューションズは、必要な生産設備を内製しながら「小さい原単位で、小刻みにやっていく。これまで電動車のラインアップを広げる中でモーターや電池、水素タンクの生産設備を短いリードタイムで内製してきたのと同様だ」(長田氏)。設備に関する社内の事業部や設備メーカーとも連携し、電動車800万台に対応した供給体制を確立する。
トヨタは電動車のフルラインアップでさまざまなニーズに応える方針だが、規制やユーザーの嗜好の変化など、不透明な状況に柔軟に対応することも課題となる。HEVやPHEV向けのエンジンの改善も必要だ。その中で変化を的確に捉えながら製品化するためには、開発期間の短縮が不可欠だ。シミュレーションの活用だけでなく、トヨタ生産方式の考え方を取り入れて改善し続ける効率的なデジタル開発などによって、少ないリソースで従来と同等以上の開発を目指す。電動車のラインアップを増やすに当たっては、PHEVとEVのプラットフォーム共通化も検討する。
実際に、先日発表したSUVタイプのEV「bZ4X」は、従来の車種と比べて開発期間を30%短縮した。今後投入するEVは開発期間を従来から40%短縮したい考えだ。リソースやコストを抑えた開発体制とすることで、変化に強いクルマづくりにつなげる。
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