LTの価格でフル機能が使える、生まれ変わった「AutoCAD」と「AutoCAD Plus」:CADニュース
オートデスクは、オンラインで「AutoCAD 新戦略記者説明会」を開催し、従来の「AutoCAD」「AutoCAD LT」によるツール提供を戦略的に見直し、日本市場向けに大幅な変更を加えたことを発表した。従来のAutoCAD LTが「AutoCAD」に、従来のAutoCADが「AutoCAD Plus」となり、新しい「AutoCAD」はLTの販売価格のまま、業種別ツールセットを除く従来のAutoCADのフル機能を利用できる。
オートデスクは2021年5月7日、オンラインで「AutoCAD 新戦略記者説明会」を開催し、従来の「AutoCAD」「AutoCAD LT」によるツール提供を戦略的に見直し、日本市場向けに大幅な変更を加えたことを発表した。
具体的には、従来のAutoCAD LTが「AutoCAD」に、従来のAutoCADが「AutoCAD Plus(AutoCAD including specialized toolsets)」となる。
新しく生まれ変わった「AutoCAD」は、AutoCAD LTの提供価格7万1500円(税込み、サブスクリプション方式による年額)はそのままに、従来のAutoCADが提供する業種別ツールセット以外のフル機能を利用できる。一方、「AutoCAD Plus」に関しては機能と価格(23万1000円 ※注1)に変更はなく、ツール名称のみが変わる。両製品ともに提供開始は同年5月7日から。
※注1:「AutoCAD」と同じく、サブスクリプション方式による年額(税込み)。
この大幅な見直しは、世界に先駆けて日本市場をターゲットにした、グローバルとしてのAutodeskの戦略的な変更だという。同社 代表取締役社長の織田浩義氏は「日本市場が抱える“待ったなし”のさまざまな課題と期待に応えるために、設計生産性を向上し、いつでもどこでも誰でも使える柔軟性を備え、信頼のあるDWGを提供することで安心、安全な利用環境を実現し、それらを利用しやすい魅力的な価格帯で提供するよう、AutoCADを新たに生まれ変わらせた」と語る。
新しく生まれ変わった「AutoCAD」と「AutoCAD Plus」の違い
これまで、AutoCAD LTはAutoCADの廉価版2D CADとして位置付けられ、2D作図/編集、Web/モバイルアプリ、TrustedDWGテクノロジーといった2D図面作成業務を支援する限られた機能を提供してきた。今回、AutoCAD LTが価格はそのままに、新たに「AutoCAD」として生まれ変わったことで、従来のAutoCADで提供してきた3Dモデリング/ビジュアライゼーション、API&アドオンアプリ、CAD標準仕様、Express Toolsおよびデータ書き出しといった機能が利用できるようになる。「これまで2次元中心であったAutoCAD LTユーザーは、今後3Dモデリングや自動化、カスタマイズといった生産性向上に向けた大きな一歩を踏み出すことができる」(織田氏)。
新しく生まれ変わった「AutoCAD」と「AutoCAD Plus」との大きな違いは、Architecture(建築設計)/Mechanical(機械設計)/Electrical(電気制御設計)/MEP(設備設計)/Plant 3D(プラント設計)/Map 3D(地図情報)/Raster Design(ラスター画像処理)からなる業種別ツールセットが含まれるか否かであり、これらを使う予定のないユーザーにとって、新しく生まれ変わった「AutoCAD」は非常に魅力的な構成と価格であるといえる。
ただし、この変更により、例えば3Dモデリング/ビジュアライゼーションの利用が目的で、従来のAutoCADを利用していたユーザーが、新しく生まれ変わった「AutoCAD」へ乗り換えてしまう可能性もある。価格差も大きいため、売上などへの影響も懸念される。
この点について、同社 マーケティング本部 ディレクターの伊藤宏隆氏は「確かにそういう可能性もあるため、この戦略的な変更を機に、新たなユーザーを獲得しなければならないと認識している。新しく生まれ変わった『AutoCAD』を投入することによって、AutoCADの存在、AutoCADでできることをあらためて広く知ってもらい、新しいユーザーを獲得し、差し引き“プラス”に持っていく。今回の発表はそれだけのポテンシャルがある内容だと確信している」と述べる。
なお、今回の発表に併せて、AutoCAD LTの新規販売は同年6月7日で終了となる。また、既存のAutoCAD LTユーザーに対しては、AutoCAD LTのライセンス更新のパスは残しつつ、さまざまな選択肢を提供するとしている。
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