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3Dモデリングで“作りすぎ”解消へ、アパレルDXへの取り組みモノづくり最前線レポート(2/2 ページ)

ファッションワールド東京(2021年3月23〜25日、東京ビッグサイト)において、FMB 代表取締役の市川雄司氏が登壇し、「『3Dモデリング』がもたらすアパレルDXの未来」をテーマに基調講演を行った。本稿ではその内容を紹介する。

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3Dデータを基にしたモノづくりを

 現在のファッション業界におけるモノづくりの流れは、企画や素材が決まった後に、チェックを行い1st、2nd、3rdサンプルを作る。次にデザイン検討会やMD(マーチャンダイジング)計画を立て、撮影(ささげ業務)、EC (Electronic Commerce)への掲載などを行う。サンプル製作の段階で選定された色が採用されない場合、そのサンプルは廃棄するなどロスとなる。

 これを3DCGで組み上げると、そのままECに上げて、先行受注を取るなど、消費者の反応を見ながらモノづくりを行うことが可能になる。精度の高い生産数量の決定や、大幅な時間短縮、CGのプロモーションへの使用など、1つの作業を複数の業務に活用できるようになり、業務効率化、品質向上、生産性向上など大きなメリットがある。

 「短縮した時間や削減したコストで新しい取り組みを行うことも可能だ。われわれの調査ではこれらのロスを計算すると、サプライチェーン全体の売り上げ対比で10%程度の利益が残る計算になる。このような新しい産業形態にしていくことで、モノを残さない産業にしながら高利益率の体質にしていくことを提案している」(市川氏)。これまでファッション業界は川上から川下に分業体制になっており情報とモノの流れが一方通行であった。これを、3Dデータを中心にして、モノづくりを双方向で同時に考えていく産業構造(情報統合生産)を目指している。

 情報統合生産を行うためには、産業構造を徐々に変えていく必要がある。現在の工程では、最初に決めたパターンについて、徐々にサンプルを作りながら修正をかけ、最終的なパターンが決まり、量産化される。3Dモデリングを最初のパターンで組み上げた場合、そのCGでPRや先行受注を行うと、修正された製品とCGが違うものになる。「このギャップの解消が現状の最も大きな壁となっている」と市川氏は語る。

 最良の方法は、最初のパターンを量産生地に合わせて修正しないようにするというものだ。3DCGを見ながらそれに合わせて決定することで、3DCGと製品が同じものになる。「こうしたデジタルデータをベースとした形態に徐々に変化させていくことが重要だ」(市川氏)。

 自動車業界や建築業界はすでに3Dデータを中心としたモノづくりが行われている。サプライチェーン全体で情報を共有することで、パーツで在庫して、最終製品の在庫は持たないという生産体制も可能となる。「ファッション産業も徐々に製品で在庫を残さないという産業に変えていくことが重要だ」と市川氏は訴えている。

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