設計と製造の“隔たり”を解消、日立の3D組み立て手順書自動作成システム:製造ITニュース(2/2 ページ)
日立製作所はLumadaの1ソリューションとして、製品の3D CADデータから最適な組み立て順序を算出して、3Dの組み立て手順書を自動作成する「組立ナビゲーションシステム」を提供中だ。手順書を自動作成することで何が変わるのか。担当者にシステムの強みや技術的仕組み、開発の背景を聞いた。
設計と製造両部門のニーズを満たす
組立ナビゲーションシステムは日立の大みか工場(茨城県日立市)で開発された。開発の背景について菅原氏は、当時の大みか工場が抱えていた2つの課題を解消するためだったと振り返る。
課題の1つは組み立て作業の効率化だった。従来の2Dモデルで表された作業手順書は「読み込み作業に習熟するまで10年かかる」といわれるほど、習熟度次第で作業にかかる時間差が大きかった。「大みか工場では発電所やダム、上下水道向けの制御盤などを製造しているが、これらは施設の建設時期によって生産量が変動しやすい。生産量が増加した際には、労働力を補うため新人作業員を採用する。こうした人材を即戦力化する上では、2Dではなく3Dの設計図が必要だった」(菅原氏)。
もう1つは設計部門と製造部門間のコミュニケーションの“隔たり”を解消する狙いがあった。菅原氏によると、組立ナビゲーションシステムの画面を、設計/製造部門が参加するデザインレビューのツールとして使ってもらうことを想定していたという。製造部門は組み立て順序の順番を見て、自部門の要求を設計側に伝えて話し合う。これによって両部門が納得した形で、組み立て作業効率化を進められる。「実際にどういうものを作るのかを早期に知りたい製造部門側と、製造部門の要求を取り入れつつも自部門の工数増加を抑え、顧客ニーズを盛り込んだ設計図を制作したい設計部門の要望を共に満たせる」(菅原氏)という。
手順書を作成代行するサービス化も検討
日立製作所では組立ナビゲーションシステムをベースとしたさまざまなプロジェクトを推進する予定だ。
例えば、2020年6月にはコロナ禍における人工呼吸器の製造支援を目的に、組立ナビゲーションシステムを活用して、人工呼吸器の3D作業手順書を無償公開するプロジェクトを開始した。作業手順書の基となるデータには、アイルランドのメドトロニック(Medtronic)が無償公開していた人工呼吸器の3D CADデータを使用している。「当時はコロナ禍の最中で、当社でも何か社会貢献ができないかという声が内部で出てきて、プロジェクトを立ち上げた。無償公開後は呼吸器の制作に関する問い合わせを頂いた」(菅原氏)。
菅原氏は組み立てナビゲーションシステムの今後の展望について「顧客からの要望を反映しながら、機能をより使いやすくブラッシュアップしていきたいと考えている。また、事業的な面ではシステムの売り切りではなく、ソリューションに近い形で提案するつもりだ。具体的には、組立ナビゲーションシステムを用いた手順書の作成代行サービスの立ち上げを検討している。メーカーの中には繁忙期に差し掛かると指示書を作る時間も確保できない、熟練技術者のノウハウのデジタル化が進まないという声を聴くこともあり、そうした顧客の声に応える」と語った。
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