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成長しない日本のGDP、停滞の20年で米国は日本の4倍、中国は3倍の規模に「ファクト」から考える中小製造業の生きる道(2)(3/3 ページ)

苦境が目立つ日本経済の中で、中小製造業はどのような役割を果たすのか――。「ファクト」を基に、中小製造業の生きる道を探す本連載。第2回では、GDP推移から見た日本経済の停滞について解説します。

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経済が成長しなくなった日本経済

 図5は1980年の各国のGDPを1.0とした場合の、成長率を表したグラフです。1980年の時点に対して、何倍になったかを数値として表現しています。

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図5 1980年を1.0とした場合のGDP成長率推移 名目値(クリックで拡大)出典:OECD資料から筆者が作成

 この40年ほどで、カナダや米国は約7倍、イタリアが約8倍、フランスが約5倍で、低成長のドイツでも4倍近くGDPが増大しています。中国や韓国はもはやこのグラフの枠に収まらない成長率となっています。直近の2020年のデータが反映された国では、コロナ禍の影響で成長率が下がっている様子も確認できますね。

 ただ、日本だけ1990年ごろから停滞が続き、2019年で2倍強といった低成長となっています。どうやら日本は、前回紹介した労働者の平均所得だけでなく、そもそもの国全体の経済活動自体が停滞しているようです。

 現在、日本は世界第3位のGDPを誇る「経済大国」という立場を維持しています。しかし、経済が停滞し続けていることで、その存在感は年々薄れてきているようです。今後もこの傾向が続くようだと、世界第3位を保ち続けるのも難しいかもしれません。

 それでは、そもそも、なぜ日本は経済大国となることができたのでしょうか。

 多くの皆さんが気付いていることだと思いますが、日本は1億人以上もの人口を抱えている「人口大国だったから」という点が最も大きな理由です。人口が多ければ、たとえ一人一人の生み出す付加価値が低くても、合計値であるGDPは大きくなります。中国が先進国と位置付けられていなくても、GDP世界第2位の経済大国であるのはそういう要素が大きく影響しています。

 ただ、日本は、先進国の中でもより早く大きく人口が減っていくことが確実視されている国です。人口が減る中で今のやり方を続けていれば、経済規模を維持していくことが難しいのは明らかです。その中で、より一層、一人一人の経済的豊かさや、労働者1人当たりの生産性を重視していくことが求められているのです。

次回は1人当たりの豊かさに焦点

 さて、今回はGDPの推移をさまざまな角度から取り上げることで、国としての経済規模の推移と課題について紹介してきました。ここまで見てきたように、日本は、バブル崩壊後から長い間、国全体としての経済成長が停滞してしまっているということが分かりました。そして、急速に成長し続ける世界各国の中で「唯一停滞している先進国」という特殊な立場にあることが見えてきました。

 それでは、1人当たりの豊かさについては、どのように変化したのでしょうか。GDPは国全体の経済規模を表しますが、人口1人当たりのGDPは国民一人一人の豊かさのレベルを表す指標となるはずです。次回以降で1人当たりの指標について取り上げていきたいと思います。

⇒前回(第1回)はこちら
⇒次回(第3回)はこちら
⇒本連載の目次はこちら
⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

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 慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

 医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。


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