欧州発の黒船か、新たなデータ流通基盤「GAIA-X」とNTTコムが相互接続実証を開始:製造ITニュース(2/2 ページ)
NTTコミュニケーションズは2021年4月8日、欧州が自国や地域のデータ主権の保護を目的に構想を進めているデータ流通基盤「GAIA-X」との連携を進め、相互接続を可能とするプラットフォームのプロトタイプを開発したと発表した。
GAIA-Xの中核担う「IDSコネクター」
「GAIA-X」において、データへのアクセスを制御する中核を構成する技術が「IDSコネクター」である。各拠点のデバイスと各社のクラウドが「IDSコネクター」を介して通信を行い、法令やデータ利用契約の開示条件に従って、アクセス可否をコントロールする。ドイツ標準の工業規格(DIN SPEC 27070)に採用されており、現在は国際標準化を目指している状況だという。
今回、NTTコミュニケーションズではこの「IDSコネクター」と相互接続を可能とするプラットフォームのプロトタイプを開発した。NTTコミュニケーションズのICT基盤上にIDSコネクターを実装し、機能や性能を検証した他、各種デバイスやサーバのデータアクセスを「IDSコネクター」で制御した。
さらにこれを相互接続し、スイスのドローン製造工場のデータを日本とドイツに流通させることに成功したという。これはサプライチェーンにおけるCO2排出量の情報の自動取得を想定し、CO2排出量の算定基準となる工場の製造ラインデータを取得したものだ。製造ラインデータは通常は外部流通しないため、機密部分は守秘としたままで必要となるデータだけが取得できるかを検証し、成功したという。
NTTコミュニケーションズでは、この実験と活動成果を基に、2022年3月までに今回のプラットフォームの商用版を開発予定としている。
自動車産業などから「GAIA-X」活用の動きは加速
境野氏は「欧州が一貫したデータ戦略で『GAIA-X』を中心としたデータ流通の仕組みを動かそうとしている中で、対応に乗り遅れれば、欧州企業との取引が難しくなることも想定できる。そうならないためにも事前に準備を進めておくことが重要だ」と警鐘を鳴らす。
特に対応を迫られるのは製造業になる見込みだ。「欧州で展開している製造業では影響は出てくると考えられる。特に『GAIA-X』に欧州の自動車メーカーやティア1サプライヤーも参加しており、これらと取引がある日本のサプライヤーや素材メーカーは準備が必要になるだろう」と境野氏は語る。
データ活用の仕組みは現在国際社会でもさまざまな議論が進められているところだが「地域ごとに環境や規制も異なるため、基本的には各地域や各企業に合わせたデータ流通プラットフォームが形成され、これらの連携でデータを流通される仕組みに集約されていることだろう。その中で、公共性の高いデータについては、ルール作りは政府や自治体が進め、これらに沿った形で民間企業は参画していくことになると考えられる。日本政府でも検討を進めている段階だと聞いているが、制度設計に期待したい」と境野氏は今後のデータ流通の展望について語っている。
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