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外観検査をロボットとAIで自動化するソリューション、ロビットが製品化FAニュース(2/2 ページ)

ロビットは、ロボットとAIを組み合わせた外観検査ロボット「TESRAY Sシリーズ」を発表した。独自開発の多軸ロボットアームと撮像モジュール、AIがセットになったロボットで、樹脂や金属、繊維などの素材や射出成形、プレス加工、めっき加工、塗装など複数の加工品の外観検査を自動化する。

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外観検査の自動化が進まない理由

 TESRAYを提供開始してからロビットに外観検査の自動化に失敗した経験を持つ企業から駆け込み寺のように相談が来るケースも少なくなかったという。

 ロボットSIerや検査装置メーカー、AI開発ベンダーに相談するも十分な成果が出ずにプロジェクトがストップ。その結果、ロビットに問い合わせが来るという流れを多く経験したことで、外観検査の自動化を阻む以下の3つの要因が明らかになったと新井氏は語っている。

従来技術では対応できない

 1つ目は「従来技術では対応できない」という点である。AIを使わずに画像認識技術のみで外観検査システムを構築する場合、撮影した画像とルールベースによる画像処理の組み合わせが基本となる。この場合、検査する個体ごとの色差や位置決めの要件が厳密であったり、光の反射などの影響を受けやすかったりすることから正常に処理できないことが多い。結果的に検査できる内容が限られてしまい、ラベルのズレや印字ミスなど、明らかな異常にしか対応できない。そのため、幅広い製品に対応した外観検査の自動化には、検査に最適化された撮像技術とロボット技術、そしてAIやディープラーニングが必須要件となる。

必要な技術をそろえている企業が見つからない

 2つ目は「必要な技術をそろえている企業が見つからない」という点である。先述したように外観検査自動化には撮像技術とロボット技術、AI技術を兼ね備えている必要がある。しかし「そうした企業は非常に少ない」と新井氏は指摘する。従来型の検査装置メーカーにはAIの知見が、AI開発ベンダーは撮像技術やロボティクスの知見が不足しがちである。検査装置メーカーとAI開発ベンダーによる合同プロジェクトにすると、すり合わせ技術が蓄積/発揮できず、性能や費用面で問題を抱えるケースがあるという。

製造業に合わせた開発が難しい

 3つ目は「製造業に合わせた開発が難しい」という点である。検査対象の製造工程の特性や異常の基準、納入する工場の要件など、複合的な要件を考慮しながらソリューションを構築するノウハウを持つ企業も少ない。結果的にPoC(概念実証)で実現した検査精度を現場で再現できないケースや、高額な費用が掛かり、投資対効果が見合わないケースが多い。また、AIに学習させるサンプルに関しても、製造現場での収集が限られる中で、どのようなサンプルを集めるべきかという知見がないと、AIの精度が上がらないケースもある。

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ロビットの代表取締役CEO兼CTOの新井雅海氏。2014年に東京で創業。スマートフォンと連動してカーテンを自動開閉するmornin`を2016年に発表。その際に町工場の後継者不足や人材不足を知り、産業向けのソリューション開発に事業の軸足を変えた(クリックで拡大)

 ロビットでは創業メンバーがそれぞれAI、ハードウェア、ソフトウェアのバックグラウンドを持っていたので、社内でお互いの知見をすり合わせながら開発を進めてきた。また、社員を採用する際もどれか1つの技術にしか志向がないエンジニアではなく、専門領域以外の技術への学習意欲や趣味レベルでも複数の技術を扱った経験のあるエンジニアを積極的に採用しているという。

 「一般的なエンジニア採用では設計は設計の経験、AIベンダーはAIの開発経験だけを評価するが、当社の場合は横断的な知見や経験を求めている。現職ではハードウェアの経験しかなくても、趣味でAIを使った電子工作をしているなど自己研さんに励むエンジニアは当社が欲しい人材だ」(新井氏)

 ロビットでは販売台数の目標は設定せず、国内製造業の旺盛な需要を取り込むことを目指す。「製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が本格化してきた中で、顧客側も一度失敗を経験して学習し、AIに対する理解度が高まっていると感じている。一昔前のように、AIなら何でもできるという考え方ではなく、こういうやり方であればAIで解決できるのではないかといった考え方で当社に問い合わせするケースも増えている。国内労働人口の減少や、ベテラン技術者の技能承継、コロナ禍による外国人労働力の不足など、製造業の自動化需要は高まる一方なので、今後は検査の前後工程の自動化も含めて対応する領域を拡張していきたい」と新井氏は語っている。

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