ローカル5Gでロボットを遠隔操作、人の遠隔作業支援も実現――NEC甲府工場:スマートファクトリー(2/2 ページ)
NECとNECプラットフォームズは、NECプラットフォームズ甲府事業所において、ローカル5Gを活用したピッキングロボットの遠隔操作と遠隔作業支援の有効性が確認できたと発表した。今後、実用化に向け2021年度は価値検証を進め、2022年度中に本格導入を目指す。
ローカル5Gによる人の遠隔作業支援
NECプラットフォームズ甲府事業所で行ったローカル5G実証のもう1つの取り組みが、人の遠隔作業支援である。これは、現場作業者が着用したスマートグラスを通じて映像や音声を共有するNEC遠隔業務支援サービスを活用し、支援者や熟練者が現場に赴くことなく遠隔からリアルタイムで作業支援を行うというものだ。データ量が大きい映像でも5Gを活用することで安定的に伝送でき、現場作業者の作業効率や正確性の向上につなげられる。
今回の実証実験では、リアルタイムに状況を把握して作業指示を出すことでライン停止時間と後戻り作業が削減でき、製造現場における遠隔作業支援の有効性を確認できた。またフルHD映像とより高精細な4K映像のそれぞれについて遠隔作業支援の効率性を比較して評価したところ、4K映像の方が支援時間を平均で約20%短縮できることが確認できたという。
齋藤氏は「遠隔地からリアルタイムに現場の様子を確認できることの有効性を確認できた。特に工場間のリモート支援など、現場と支援者の距離が離れるほど有効性は増加する。活用をさらに広げていくためには、遠隔業務支援システムの機能拡充と手軽さが必要になるだろう」と述べている。
今後は、高速大容量という5Gの特長を活用し、4Kや8Kなどの高精細な映像の共有やAR(拡張現実)を利用したコミュニケーションを製造現場で実現することで、さらなる生産性向上を目指す。「今回の検証で気付いたのは映像品質を高めることで、支援時間の短縮と状況把握の正確性が向上するという点だ。高い映像品質での支援を行う意味でローカル5Gのような技術は効果的だ」と齋藤氏は5Gの価値について語る。
工場での無線ネットワークの活用については5G以外にもさまざまな技術が存在しているが、齋藤氏は「今回の実証で示したようなロボットの遠隔操作など以外でも、工場内でも映像を活用する動きは広がっている。より高品質な映像情報を活用し、安定性や低遅延などを求めるのであればローカル5Gのような技術は最適だと考えている。もちろん工場側の立場として、費用対効果は見定めていくが、将来的には必要になる技術だと考えて、積極的に採用していくつもりだ」と5Gについての考えを述べている。
また、NECでは、NECプラットフォームズ甲府事業所での実績なども含め、同社が展開する製造業向けソリューションを組み合わせ、製造業向けローカル5Gのトータルソリューション化を行い外部提案を進めていく考えだ。北野氏は「価値検証の成果が確認できた後の2022年度には製品化を進めたい」と語っている。
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