セラミック外装の硫黄物系全固体電池、基板への表面実装に「世界初」対応:組み込み開発ニュース
マクセルは2021年3月30日、硫化物系固体電解質を使用したセラミックパッケージの小型全固体電池を開発したと発表した。セラミックパッケージの採用により、250℃環境下での信頼性を確保。基板へのリフローはんだ付けに対応した「世界初」の硫黄物系全固体電池だ。
マクセルは2021年3月30日、硫化物系固体電解質を使用したセラミックパッケージの小型全固体電池(以下、セラミックパッケージ型全固体電池)を開発したと発表した。セラミックパッケージの採用により高耐熱性を実現して、250℃環境下での信頼性を確保。基板へのリフローはんだ付けに対応した「世界初」(マクセル)の硫黄物系全固体電池となった。
高耐熱性と高密閉性を実現
セラミックパッケージ型全固体電池のサイズは14.5×14.5×4mmで、公称電圧は2.3V、標準容量は8.0A。容量や出力特性は2020年9月にマクセルが発表した、コイン型全固体電池の性能を引き継いでいる。電解質には、三井金属鉱業との協業で開発したアルジロダイト型結晶構造を持つ高性能固体電解質を用いた。
特徴は2つある。1つは基板への表面実装を可能にした点だ。京セラの開発したセラミックパッケージを採用することで、既存のリチウムイオン電池やコイン型全固体電池では難しかった250℃環境下での高信頼性を確保した。これによってリフローはんだ付けによって基板に取り付けることが可能になった。
もう1つは外装部分の溶接条件を最適化することで、高密閉性を実現した点である。リフローはんだ付け後の気密性試験であるヘリウムリーク試験を行ったところ、一般的なコイン電池と同程度の10-11(Pa・m3/秒)レベルを達成した。
これらによって、これまでコイン型全固体電池で実現できていなかった一般的なコイン形電池と同等の高耐熱性と高密閉性を実現するとともに、コイン型全固体電池の出力特性も維持した。
マクセルは2021年度中にセラミックパッケージ型全固体電池のサンプル品を出荷する予定だ。
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