きっかけは朝のニュース、コロナ禍が結んだコニカミノルタとタムラテコの協業:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
コロナ禍は多くの企業に苦しみをもたらしているが、厳しい環境だからこその新たな出会いにつながったケースもある。コロナ禍をきっかけに包括的協業に進んだコニカミノルタとタムラテコの経緯と今後の取り組みについて話を聞いた。
ボトルネックだった調達の問題を解消
MONOist 実際に連絡した際の反応はどういう感じだったのでしょうか。
竹本氏 当然ながら「ニュースを見たので手伝わせてほしい」といきなり話をしても、すぐに話が進むわけではありません。いきなり取引もない企業が「話をしたい」と言っても信用されるわけではないのが当たり前です。ただ、コニカミノルタとしての姿勢や、先述したような組み立て系のノウハウなどを説明し「コロナ禍だからこそ一緒に乗り切るために支えたい」ということを訴えました。
タムラテコのオゾン発生器はCOVID-19の感染防止への効果が期待され、医療機関や緊急車両での引き合いが強くある状態でした。ただ、話を聞いていくとボトルネックとなっていたのは製造現場そのものよりも基幹部品の調達が問題になっているということが分かりました。そこで、製造現場でのモノづくりの支援よりも、コニカミノルタのグローバル調達網や知見を生かし、基幹部品調達をまず支援するということになりました。
対象となっていたのは、アジアのサプライヤーによる耐オゾン性のあるファンモーターと米国のサプライヤーによるオゾンセンサーで、どちらも代替品が用意できない専用部品でした。サプライヤーそのものも受注が急増する中で個々の対応が難しくなっており、要求分の数分の1レベルでしか供給を受けることができていませんでした。
そこで、サプライヤー側の課題を聞き、注文情報を整理して提供することや中期のフォーキャストを共有することで、タムラテコ向けの部品供給を円滑に行えるようにしました。先述したパートナーコラボレーション活動と同様の取り組みを進めたわけです。調達の問題を解決できたことで、タムラテコで積み上がっていたオゾン発生器の受注残分を2021年3月までにはほぼ解消することができました。こうした取り組みが評価を受け「もっと一緒に何かできないか」という話になり、包括的協業へと話が進みました。
医療機器を共同開発して展開へ
MONOist 協業では具体的にどのような取り組みを行うのでしょうか。
竹本氏 協業のポイントとしては「コニカミノルタのモノづくり力を生かした部品調達、製造受託」「コニカミノルタグループの販路を活用したタムラテコ製品の販売」「新規医療向け製品および製品制御システムの共同開発」「周辺機器および周辺デバイスとの統合プラットフォームの活用」などを挙げています。
田渕氏 既にコニカミノルタの販売ルートでタムラテコのオゾン発生器の販売を開始していますが、新たな取り組みを象徴する協業の柱として取り組んでいるのが、新たな医療機器の共同開発です。コニカミノルタでも医療機器への取り組みを強化しており、タムラテコのオゾン関連製品の知見を組み合わせることで新たな価値を提供できると考えたためです。販売も共同で展開する他、コニカミノルタが展開する「見たいものを見えるようにする」認知技術やIoT基盤なども組み合わせるコンセプトです。
医療機器認可を取得し2021年内に市場投入する計画で現在進めているところですが、製品として目指しているのは、人がいる環境でもオゾンによる除菌効果が得られる医療機器の開発です。製品の設計はコニカミノルタで行い、オゾン発生デバイスやオゾン関連の技術についてはタムラテコが提供します。さらに製品の製造は、コニカミノルタの新三河工場で行う計画です。
競合でシェアを争う時代はもう終わり
MONOist 短期的な成果も問われる中で、こうした柔軟な協業の動きは珍しいように感じます。
竹本氏 もちろん短期的な成果として要所は押さえる必要はありますが、日本の産業構造を考えると、狭い業界内での競合関係で争う時代は終わっています。一方でコロナ禍を含め多くの社会課題が山積しています。この中では、企業間に基本的には対立というのは存在せず、社会課題の解決に一緒に取り組む方向性に変わっていくべきだと考えています。
そういう意味で、これからの時代は大企業や中小企業などの企業規模に関係なく、どういう志を持ち、どういう技術があり、それをどういう形で社会課題に向けていくのかということが何より重要です。何でもというわけではありませんが、こうした志が共有でき、技術的な親和性の高いところでは積極的に協力していくべきだと考えています。
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