製造業はGAFAの下請けとなるのか、とり得る選択肢:IVI公開シンポジウム2021春(1)(3/3 ページ)
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2021年3月11〜12日、オンラインで「IVI公開シンポジウム2021-Spring-」を開催した。今回はその中から、IVI 理事長の西岡靖之氏による講演「日本の製造業はGAFAの下請けになってしまうのか?〜ソフトウェアの力と組織知能〜」の内容を紹介する。
IVIが進めるデータを結ぶ仕組み
IVIではスマートシンキングを通じて、現場発のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく方針だ。これらのデータの流れを実現する現場発DXのためのチャートなどを用意する他、データ連携を容易にするフレームワーク「コネクテッドインダストリーズオープンフレームワーク(CIOF)」などを用意している。
「CIOF」は、日本政府が提唱する「Society 5.0」や「Connected Industries(コネクテッドインダストリーズ)」を実現するために必要となる「製造プラットフォームオープン連携事業」として、産業データ共有促進事業費補助金を経済産業省から受けて、進められたものである。スマートファクトリー化など工場でのデータ活用への取り組みは加速しているが、プラットフォーム間のデータ相互連携の仕組みが求められている。「CIOF」はこれらの課題を解決するために、既存のプラットフォーム内のシステムやデータ設定などを大きく改変することなく、容易にデータ連携を実現するための仕組みである。
データの相互連携を行うための「契約」と実際のそれぞれのデータを翻訳する「辞書」、そして実際に使用する場面での「認証」の3つの機能を持つ。「CIOF」は2019年に初めて公開したが、2021年4月からは実際の使用環境に近い状態で実証を進め2022年からは商用化をする計画だとしている。
さらに2021年度からはIVIの新たな取り組みとして「PSLX(Product and Service Lifecycle Transformation)」を開始する。西岡氏は「『CIOF』は外部とのデータ連携を実現する仕組みだが、取り組みを進める中で、社内や同じ組織内でのデータ連携や統合などの仕組みが不十分であることに気付いた。企業の中で取り組む仕組みを提供する」と語る。
西岡氏は「IVIの取り組みも6年を経て、2021年は7年目となる。まずはここまで現場をつなぐコンセプトを示し、その実際の仕掛けを提供してきた。2021年からはその他の領域もつないでいく取り組みを積極的に推進する」と方向性を示した。
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