製造業はGAFAの下請けとなるのか、とり得る選択肢:IVI公開シンポジウム2021春(1)(2/3 ページ)
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2021年3月11〜12日、オンラインで「IVI公開シンポジウム2021-Spring-」を開催した。今回はその中から、IVI 理事長の西岡靖之氏による講演「日本の製造業はGAFAの下請けになってしまうのか?〜ソフトウェアの力と組織知能〜」の内容を紹介する。
GAFA型プラットフォーマーに対する具体的対応策
あらためて西岡氏はGAFA型プラットフォーマーの強みとして以下の3つを前提として挙げる。
- 顧客数が増えても限界費用が増えない構造
- 水平分業による相互の依存関係を構築
- 標準ルールと開発ツールを提供し環境整備
西岡氏は「これらにより、データのあい路を作ってコントロールし、ネットワーク効果により市場を席巻し、詳細なカスタマイズを重ねていくことでロックインをしていく。各企業がプラットフォームの使用を前提としたビジネスにならざるを得ないような環境を作ることで、抜け出せなくするというのが戦略だ」と語る。
これらに対して、日本のとり得る方向性としては6つのケースが考えられるという。
- GAFA型のプラットフォーマーになる
- ドメイン型プラットフォーマーとして競争優位となる
- プラットフォーマーを補完する機能を提供する
- プラットフォーマーの顧客として優位に事業展開をする
- プラットフォームに依存しない事業構造とする
- GAFA型とは異なる巨大プラットフォーマーになる
西岡氏は「GAFA型プラットフォーマーは各国当局の規制などが追い付かない中で、ある意味不公正な競争環境だから実現できた立ち位置という面もある。各国政府が規制を強める動きを見せる中で、従来のような爆発的な成長力は維持できない可能性もある。そういう意味では、GAFA型プラットフォーマーに今からなろうとしてもなれないし、なる必要もない。下請けでも顧客でもよいが、立ち位置を考えながら優位なビジネス展開を進めていくことが重要だ」と述べている。
IVIが訴えるスマートシンキング
ここまで見てきたように、GAFA型プラットフォーマーを含めて、あらゆる製品が何らかのプラットフォームと接続して価値を発揮するように変化する動きは避けられないものだ。そこで、これらに対応するために製造業の変革として、IVIが訴えているのが「スマートな組織」の実現である。
「スマートな組織」とは、組織の構成員が課題を認識し、共有するとともに、新たな価値を生み出すために、デジタル技術によって、人やモノ、情報が内外に相互につながった組織だとしている。その中で、問題発見、問題共有、課題設定、課題解決のサイクルで得られる知見を共有し、そのつながりを深めることで、知の生産を行う「スマートシンキング」を体制として進める必要があるという。組織内で現場で実効力のある形でデータの共有と活用の仕組みを作り、組織として知識を生かして成長する仕組みを訴えたものである。
「あらゆる企業にソフトウェア開発の要素が求められるようになっている。ソフトウェア開発とは、雑多なニーズとシーズのモジュール化と標準化、またこれらを組み合わせてニーズとシーズを統合する作業である。また、モジュール化と標準化はレファレンスアーキテクチャをもとに作成する必要があり、こうしたアーキテクチャ作りも必要になる。そういう人材が日本企業には不足している。『スマートな組織』と『スマートシンキング』はこうした背景を受けて提唱したものだ」と西岡氏は語る。
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