「霧ヶ峰」採用の三菱電機製サーマルダイオードが高画素、広画角化:組み込み開発ニュース
三菱電機は2021年3月10日、サーマルダイオード赤外線センサー「MelDIR」に80×60画素の新製品を追加したと発表。従来の80×32画素の製品と比較して高画素化、広画角化、フレームレート向上を実現した。同画素数の赤外線カメラと比較すると製品価格を10分の1程度に抑えている。
三菱電機は2021年3月10日、サーマルダイオード赤外線センサー「MelDIR(メルダー)」に80×60画素の新製品を追加したと発表した。従来の80×32画素の製品より高画素化し、また広画角化とフレームレート向上も図った。同画素数の赤外線カメラと比較すると製品価格を10分の1程度に抑えており、低コストでの熱源検知を実現する。サンプル価格は9600円(税別)。
赤外線カメラよりも低価格、赤外線センサーよりも高画素化
MelDIRは2019年11月に三菱電機が発売した製品で、赤外線センサーよりも高画素かつ0.1℃単位での高温度分解能の熱源検知を可能にしており、かつ、赤外線カメラよりも低コストで導入できる。これまでは80×32画素の製品のみを展開していた。ルームエアコン製品の「霧ヶ峰 ムーブアイmirA.I.+」において、熱源画像から直感的に気流方向調整を選択できる「タッチ気流機能」を実現する部品として用いられた。この他、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)としての体表面温度測定で採用が増え、防犯、見守り、人数カウント、キッチン用途でも導入検討が進む。
技術的な特徴は2点ある。1つ目は三菱電機が製造した人工衛星「だいち2号」にも搭載されている「サーマルダイオード構造」を導入することで高画素化と高分解能化を実現している点だ。支持脚を半導体プロセスで形成して細線化することで高画素化を、また同一基板上にサーマルダイオードと高性能アンプを形成することで高温度分解能化をそれぞれ実現した。
2つ目は独自開発のパッケージ技術「真空防止チップスケールパッケージ技術」で小型化と省スペース化を達成した点だ。モジュールサイズは19.5×13.5×9.5mm3※1)で、市販の16×16画素サーモパイルと比較すると製品サイズを約80%に抑えている。
※1)80×32、80×60画素共に同サイズ。
回路最適化で同サイズで高画素化を実現
サーマルダイオード赤外線センサーのさらなる適用範囲拡大を目指して開発したのが、今回発表した80×60画素(型名はMIR8060B1)の製品である。回路の最適化を通じて、従来製品と同サイズでありながら高画素化を実現した。
加えて、画角は78×29度から78×53度に広げ、フレームレートは4fpsだけでなく8fpsも選択できるよう改良した。検知可能温度範囲は−5〜60℃で、通信インタフェースはSPI(Serial Peripheral Interface)。80×60画素で0.1℃単位での高温度分解能を持つサーマルダイオードは、三菱電機の「独自のもの」(三菱電機の担当者)という。
高画素化と広画角化に伴い、熱源の認識精度を従来製品と同一水準に保ちつつセンサーの検知範囲を拡大できるようになった。具体的には、標準的な高さ(2.5m)のオフィス壁面上部に取り付けた場合、検知可能範囲は最大で約4倍にまで広がる。
また、ハードウェア上の工夫によって熱源検知の感度補正を最適化することで、センサー検知範囲の縁部分においても熱源の動きを正確に認識できるようにした。フレームレートの向上と併せることで、動きの速い熱源が従来より正確に検知可能となった。
ユーザーサポートのためのツールも充実させた。レファレンスコードとレファレンスデザインを共に提供することで、温度測定プログラムなどのソフトウェア設計や、周辺回路などのハードウェア設計に必要な情報を提供して開発期間短縮をサポートする。
これらの特徴を組み合わせることで、赤外線カメラよりも低コストで高精度な熱源検知ソリューションを実現できるとしている。
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