「DXの型」でコトづくり実現へ、古河電工デジタルイノベーションセンターの挑戦:製造業×IoT キーマンインタビュー(3/3 ページ)
古河電気工業(古河電工)は2020年4月、社内のデジタル化の取り組みの成果を社内で横串を通して広げていく部署として、研究開発本部の傘下にデジタルイノベーションセンターを設立した。センター長を務める野村剛彦氏に、同センターの設立経緯や取り組みなどについて聞いた。
海外工場の立ち上げなどでリモートワーカー支援用デバイスを活用
デジタルイノベーションセンターの設立から強化しているのは、社会課題を起点とした先行R&Dだ。モノづくりの現場では、コロナ禍で出張が制限される中で海外工場の立ち上げに悩んでいる。そこで、リモートワーカー支援用デバイスとしてスマートグラスを用いた実証を進めているところだ。スマートグラスのデータから行動分析すれば、作業の効率化や技術伝承にもつなげられるだろう。
デジタルイノベーションセンターの重要な役割の一つがAI/IoT関連の人材育成やガイドライン整備だ。人材育成では、オンライン学習プログラムを社内を横串に通して展開している。ガイドライン整備では、IoTの構築やAIモデルの運用といったステップから取り組んでいくる。
モノづくり系の活用事例を横展開し利益貢献につなげる
MONOist 古河電工のように長い歴史のある製造業では、部署ごとの縦割り構造がデジタル化に向けた取り組みの浸透を阻害する一因になっていると聞きます。デジタルイノベーションセンターは、そういった課題を打破するための組織だと思いますが、やはり横串を通すというのは難しいのでしょうか。
野村氏 正直なところ、デジタルイノベーションセンター設立以前、2019年度までのデジタル関連の取り組みは部署ごとの個別最適だった面があることは否めない。ただし、デジタルイノベーションセンターの中で、研究開発本部とものづくり改革本部が一体になったことで情報共有は進みつつある。デジタルイノベーションセンターの存在を軸として、工場の拠点間連携も取りやすくなってきた。
先ほど個別最適とは言ったが、それぞれが取り組みを進めた結果として、モノづくり系ではAIやIoTの活用事例はかなり多く存在している。デジタルイノベーションセンターとしては、これらを横展開して、2〜3つは利益貢献させていきたい。
コトづくり系はまだこれからだが、いろいろと成果を作り上げていきたい。社会課題抽出と言ったが、ユーザーの困りごと解決こそがコトづくりにつながる。それに役立つDXの型を作っていくことが重要であり、それを横展開できれば実績が広がっていくはずだ。
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