細胞代謝物を高速、高精度で解析する技術を共同開発:医療技術ニュース
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、神戸大学、島津製作所と共同で、186種類の細胞代謝物を一斉分析する「代謝物抽出トータルシステム」と、有望なスマートセル候補細胞を高速で見つけ出す「ハイスループット評価システム」を開発した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2021年2月17日、植物や微生物を用いた高機能製品生産技術の開発(スマートセルプロジェクト)の一環として、186種類の細胞代謝物を一斉分析する「代謝物抽出トータルシステム」と、微生物ライブラリから有望なスマートセル候補細胞を高速で見つけ出す「ハイスループット評価システム」を開発したと発表した。神戸大学、島津製作所との共同研究による成果だ。
代謝物抽出トータルシステムは、細胞培養のために必要な全ての前処理工程を自動化する。新開発の細胞培養技術と、以前開発した「自動前処理システム」を組み合わせることにより、手作業の2分の1あるいは3分の1に処理時間が短縮し、同時処理するサンプル数が1.5倍に増加した。また、24時間の自動運転では、処理速度が約20倍となり、手作業時よりも高精度の結果を得られた。
抽出した代謝物の分析には、島津製作所が開発した液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を用いた「高精度メタボロームシステム」を使用。一度に分析可能な代謝物は、従来の99種類から、水溶性代謝物156種類と脂溶性代謝物30種類の合計186種類に増加した。
ハイスループット評価システムでは、島津製作所の超臨界流体抽出/超臨界流体クロマトグラフシステム(SFE-SFC-MS)を用いて、液体培養なしでコロニーから直接代謝物を分析する。従来法では目的物質の抽出までに5日間かかっていたが、これを約5分の1に短縮できた。
これらのシステムを組み合わせたメタボローム解析システムは、従来法と比べてより高い精度かつ約20倍の効率で、スマートセル候補細胞を選択できる。
スマートセルは、植物や微生物の細胞が持つ機能が高度にデザインされ、機能の発現が制御された生物細胞のこと。神戸大学と島津製作所は、NEDOのスマートセルプロジェクトに参画しており、これまでに「高精度メタボローム解析システム」を開発するなどの実績がある。
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