NEDOが“スマート治療室”の開発に着手、日本が強い医療技術を生かす:医療機器ニュース
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、新しい医療機器システムの開発プロジェクトに着手した。軟性内視鏡手術システム、ニューロリハビリシステム、さまざまな医療機器の設定などを一元管理できるスマート治療室の開発を目指す。いずれも、日本が得意とする技術を生かしたものだ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2014年7月1日、ロボティクス、IT、画像処理など、国際競争力のある技術を応用した医療機器システムを開発するプロジェクトに着手すると発表した。プロジェクト名は「未来医療を実現する先端医療機器・システムの研究開発」で、事業期間は2014年から2019年、総事業費は約50億円を予定している。単一の医療機器ではなく、医療現場の治療体系に必要な医療機器群を“パッケージ”として開発することが目的だ。
同プロジェクトでNEDOは、「軟性内視鏡手術システム」、「ニューロリハビリシステム」、多様な医療機器の設定・使用を一元管理できる「スマート治療室」という3つのシステムの開発を目指す。
軟性内視鏡手術システム
軟性内視鏡手術システムは、日本が得意とする軟性内視鏡とロボティックスの融合によって、医師が手術野を俯瞰(ふかん)しながら直観的に操作可能なものを計画している。手術中にリアルタイムで重要な器官を確認するためのセンシング技術、広い視野を高精度に捉える手術用内視鏡(内視鏡の眼)、眼と独立して動いて広い動作範囲と高い把持力で多様な手術方法に対応できるロボット鉗子(内視鏡の手)、ロボット鉗子の直観的な操作を可能とするコンソールセットといった技術の開発を進めるという。
ニューロリハビリシステム
ニューロリハビリシステムは、脳組織損傷によって運動信号を発信できなくなった脳に可塑性を誘導し、まひした運動や知覚の回復を図るもの。損傷した脳に運動の錯覚を誘導するための映像装置、革新的脳活動センシング装置、BMI(Brain Machine Interface)リハビリロボットシステム、リハビリ効果定量的評価システムといった技術開発が必要になるとしている。
スマート治療室
スマート治療室は安全性や医療効率の向上を目的とし、多様な医療機器の設定・使用を一元的に管理する情報処理基盤を備えたものになるという。軟性内視鏡手術システムやニューロリハビリシステムとも連携させる考えを示している。
輸入超過が続く日本の医療機器市場
NEDOによれば、医療機器の世界市場が約8%の成長率を維持し、今後も拡大すると予測されている中、日本の医療機器産業は2012年で約0.7兆円の輸入超過になっているという。
今回のプロジェクトは、こうした背景から生まれた。高性能/高機能な医療機器を開発することはもちろん、それらを連携して“システム”として開発することで、世界市場で高い競争力を発揮できる機器の開発を目指す。
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