「日立にとってCO2排出量削減は追い風」、環境とデジタルが成長エンジンに:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
日立製作所が環境や研究開発、知財に関する事業戦略を説明した。同社 執行役副社長でChief Environmental Officer(最高環境責任者)を務めるアリステア・ドーマー氏は「CO2排出量削減のマクロトレンドは日立にとって追い風だ」と語った。
「ここまで豊富な技術基盤を有しているのは世界でも数社しかない」
研究開発戦略でも、カーボンニュートラルに向けた研究開発投資の拡大や、日立ABBパワーグリッド、日立アステモなどが関わる環境分野におけるイノベーション創生が重要な役割を果たしている。
日立 執行役常務CTO 兼 研究開発グループ長 兼 コーポレートベンチャリング室長の鈴木教洋氏は「ここまで進めてきたM&Aによる新たな体制が固まってきたこともあり、これまで少し抑えめだった研究開発投資を2021年度からは強化していくことになる。投資先の内訳ではITが20%で最も多いが、ここまで豊富な技術基盤を有しているのは世界でも数社しかない。日立ABBパワーグリッドと日立アステモが加わってさらに盤石なものとなるだろう」と語る。
日立は研究開発の方向性として、2020年度から「価値起点のイノベーションへ」を掲げている。このイノベーションを創成していく中でも、日立ABBパワーグリッドと日立アステモに掛かる期待は大きく、そこにデジタルソリューション群「Lumada」を組み合わせることで価値あるソリューションを生み出していく方針である。
知財戦略でも、日立ABBパワーグリッドと日立アステモが加わることでさらなる増強が図られるという。特許出願数は日立ABBパワーグリッドで約1万件、日立アステモで約4000件に上る。日立 知的財産本部長の戸田裕二氏は「M&Aを進める中で特許出願が低下していたが、両社が加わって増加に転じた。現在注力している、Lumadaを絡めたソリューション発明では、OT(制御技術)を手掛ける競合他社の中でも量、質ともにグローバルNo.1を目指せる」と述べる。
カーボンニュートラルに関連するソリューション発明では、産業用省エネ空気圧縮機やブルー水素製造、Powered by Renewable Energyなどがあるという。また、環境価値と知財をひも付ける「知財ライブラリ」を構築し、「WIPO GREEN」などの環境技術移転プラットフォームなどを活用して社外にスケーリングしていく。
「日立の知財活動では社会貢献を目指す『IP for Society』も柱の1つにしているが、これをコンセプトに知財を触媒とした環境価値を向上するエコシステムを形成したい。日立の知財活動は1921年の知財部門創設から100周年を迎える。次の100年に向け、価値向上をけん引する知財活動を通じてビジネス成長と社会貢献を目指す」(戸田氏)としている。
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