インクジェットプリンタと同様に印刷可能な、抗原抗体検査向け光センサー:医療機器ニュース
九州大学は、抗原抗体検査に利用できる、ラベルフリーの光センサーを開発した。熱処理を必要とせず、市販のインクジェットプリンタと同様の技術で印刷でき、家庭での簡易検査などへの応用が期待される。
九州大学は2021年2月4日、抗原抗体検査に利用できる、ラベルフリーの光センサーを開発したと発表した。熱処理を必要とせず、市販のインクジェットプリンタと同様の技術で印刷できる。
抗原抗体反応を利用したセンサーの1つに、微小光共振器からなる円盤型微小レーザー素子を用いる手法がある。円盤型微小レーザー素子に含まれる抗原や抗体と検出対象物が結合すると、素子から発生する光スペクトル(色情報)が変化し、対象物を検出できる。
研究では、抗原抗体反応に用いるビオチンを常温で修飾できる、日産化学製の低粘度特殊ポリマーを活用。この特殊ポリマーを混ぜたインクを使用し、研究グループが独自開発したインクジェット印刷技術を用いて、円盤型微小レーザー素子を成型、印刷した。
印刷した円盤型微小レーザー素子の表面にビオチン分子を修飾し(ビオチン化)、レーザー素子の形状評価とレーザー特性の基本評価を実施した。その結果、レーザー発振の光スペクトルを測定し、基本性能を有することを確認した。
また、ビオチンと結合するストレプトアビジンの吸着を、レーザー発振スペクトルのシフトにより評価。ビオチンとの結合に由来するシフトが観測され、ラベルフリーのセンシングを実証した。
円盤型微小レーザー素子は、原理的にはウイルス1個の検出を可能とする超高感度センサーになり得る。しかし、既存の技術では、素子表面に抗原や抗体を結合するために、熱や酸などを使う特殊な処理が必要だった。
今回の成果は、特殊な環境を必要とせず、さまざまな物質をインクに添加できるため、幅広い応用が可能だ。印刷や計測のセットアップをポータブルにすることで、その場で結果が分かる検査や、家庭での簡易検査などへの応用が期待される。
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