横浜ゴムがIoTタイヤで新ビジネス創出へ、技術開発ビジョンも策定:製造業がサービス業となる日
横浜ゴムは2021年2月19日、乗用車用タイヤセンサーの中長期的な技術開発ビジョン「SensorTire Technology Vision」と、アルプスアルパイン、ゼンリンと共同で進めるタイヤ・路面検知システムの実証実験について発表した。
横浜ゴムは2021年2月19日、乗用車用タイヤセンサーの中長期的な技術開発ビジョン「SensorTire Technology Vision」と、アルプスアルパイン、ゼンリンと共同で進めるタイヤ・路面検知システムの実証実験について発表した。
SensorTire Technology Visionでは、センシング機能を搭載したSensorTire(IoTタイヤ)から得られる情報をドライバーや外部のさまざまな事業者に提供し、新たなモビリティ需要の変化に対応しつつ、人々の移動を足元から支え、安心・安全に持続的に貢献することを目指す。
具体的には、センシング機能とリアルタイム性を指標として提供するサービスを分類した上で、それぞれに適したセンシング機能やデータ分析・予測技術を段階的に構築しながら、センシング機能の利活用範囲を拡大していく方針だ。まずは、個人向けや車両運行管理会社を対象とした空気圧通知サービスの実証実験から開始し、2023年までに摩耗検知機能を追加する。これにより、タイヤローテーション時期の告知や、フリート(複数の車両を所有する企業や官公庁など)向けの効率的なタイヤ点検計画などの提案が可能になるという。
将来的には、地図情報に加え、渋滞情報や天候情報などのさまざまなプローブ交通情報とタイヤデータを関連付けた分析を行い、安全な運行ルートの提案といった新たな付加価値情報の提供を視野に入れる。これにより、自動運転車やMaaS(Mobility-as-a-Service)に関連したサービスを提供する企業に向けて安心・安全な車両運行管理をサポートすることを目指す。
アルプスアルパイン、ゼンリンと共同で実証実験
SensorTire Technology Visionのより具体的な活動になるのが、アルプスアルパイン、ゼンリンと共同で進めるタイヤ・路面検知システムの実証実験である。
同実証実験では、横浜ゴムとアルプスアルパインが共同開発する先進タイヤセンサーを実験用車両に装着して路面検知を行う。タイヤセンサーが有する路面検知情報とゼンリンが有する豊富な地図情報とのひも付けを行うことで、さまざまな路面のデータの分析、蓄積とシステム構築を加速させ、新たな付加価値を提案するタイヤビジネスの実現を目指すとしている。
横浜ゴムは、2019年10月開催の「第46回東京モーターショー」のプレスカンファレンスで、アルプスアルパインと先進的乗用車用タイヤセンサーの共同開発を発表している。今回の実証実験は、この共同開発を基に、SensorTire Technology Visionで示されている新たなビジネスの創出に向けて取り組みをさらに拡大していくものだ。
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