検索
特集

ドライバーがいない完全自動運転車、タイヤの状態は誰が見るのか自動運転技術(1/3 ページ)

住友ゴム工業と群馬大学 次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)が共同で研究を進めているレベル4の自動運転車に対応したタイヤ周辺サービスについて説明。2020年内に、住友ゴム工業が大型トラックなどのタイヤ空気圧監視を行うタイヤ周辺サービスを、CRANTSがこれまでの研究成果を基にした自動運転サービスを始める方針を示した。

Share
Tweet
LINE
Hatena
会見に登壇した住友ゴムとCRANTSの担当者
会見に登壇した住友ゴムとCRANTSの担当者。左から、住友ゴムの西本尚弘氏、CRANTSの小木津武樹氏、住友ゴムの谷村一晴氏。三氏の前にあるのは、実証実験に用いているTPMS用センサーを組み込んだタイヤのカットモデル(クリックで拡大)

 住友ゴム工業(以下、住友ゴム)と群馬大学 次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)は2020年1月15日、両者が共同で研究を進めている、レベル4の自動運転車に対応したタイヤ周辺サービスについて説明した。併せて、群馬県前橋市内にあるCRANTSの設備や自動運転車なども披露。2020年内には、住友ゴムが大型トラックなどのタイヤ空気圧監視を行うタイヤ周辺サービスを、CRANTSがこれまでの研究成果を基にした自動運転サービスを始める方針を示した。

 両者は2019年5月にレベル4の自動運転車に対応したタイヤ周辺サービスの共同研究を開始した。同研究では、TPMS(タイヤ空気圧監視システム)用のセンサーをタイヤに組み込んで走行時のタイヤ空気圧と温度を監視することにより、パンクなどのトラブル発生時のメンテナンスに速やかに対応することを目的としている。センサーがタイヤに関する異常を検知した際に、行動判断に必要な情報をCRANTSに設置された自動運転管制所に提供し、ドライバーのいないレベル4の自動運転車でも、安全な運行ができるようなタイヤサービスとなっている。

 住友ゴムは2020年1月1日付で、レベル4の自動運転車向けを含めたタイヤ周辺サービスの事業化を進める部署として、オートモーティブシステム事業部の傘下にソリューションビジネスチームを新設した。同チームのチームリーダーを務める谷村一晴氏は「当社としても、タイヤ周辺サービスは新たな取り組みになる。そんな中で、群馬大学のCRANTSは貴重なパートナーであり、安全で事故のない未来に向けてこのような実験の場は欠かせないと感じている」と語る。

 一方、2016年2月に発足したCRANTSは、自動車メーカーが開発を進める自動運転技術とは一線を画する形で、ドライバーのいないレベル4以上の自動運転車の開発に注力してきた。2017年5月には、今回の会見の会場となったレベル4以上の自動運転車の開発と実証実験を行うための専用施設を開設しており、これまでに公的研究機関として国内最大規模となる36件の自動運転車の実証実験を積み重ねている。

CRANTSによる自動運転車の実証実験事例
CRANTSによる自動運転車の実証実験事例(クリックで拡大) 出典:CRANTS

 CRANTS 副センター長の小木津武樹氏は「今ある自動車はドライバーによる運転を前提としており、大量生産によって安価に供給され、あらゆる場所で走れることが前提になっている。一方、レベル4以上の完全自動運転車は、ドライバーによる運転は不要であるとともに、あらゆる場所で走る必要はなく、移動手段が求められる地域やルートを走れればいい。自動車のように大量生産する必要もない。CRANTSで研究している自動運転車は、自動車メーカーがADAS(先進運転支援システム)の延長として開発を進めているものとは全く異なる」と説明する。

 例えば、自動車メーカーが開発する自動運転車は、“あらゆる場所で走れることが前提”なので国内に設置されている約21万基の信号機を全て認識できなければならない。しかし、CRANTSの自動運転車は、指定された走行ルート内にある数十基の信号機を認識できればよい。

 とはいえ、CRANTSの完全自動運転車を実用化していく上では、さまざまな技術や周辺サービスの開発が必要になる。「完全自動運転車といってもタイヤを使って走ることに変わりない。タイヤが健全でなければ安全な走行は難しいが、ドライバーのいない無人運転の場合、タイヤの状態を把握できないためにメンテナンスタイミングを見落とす可能性がある。住友ゴムとは、完全自動運転車に必要なタイヤの状態をしっかり検知できるシステムを共同で開発している」(小木津氏)という。

自動運転車向けのタイヤモニタリングサービスのイメージ
自動運転車向けのタイヤモニタリングサービスのイメージ(クリックで拡大) 出典:住友ゴム工業

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る