屋内飛行向け“羽根のない”ドローン、マイクロブロアで静音性と安全性を実現:イノベーションのレシピ
NTTドコモがオンラインで開催した展示会「docomo Open House 2021」で、同社が研究開発中の「羽根のないドローン」が出展された。風船型の機体でマイクロブロアによる空気噴出によって飛行する。通常のドローンと異なりプロペラや翼を持たないため、高い安全性と静音性を実現。主に、屋内飛行での運用を想定する。
NTTドコモは2021年2月4〜7日にかけて、同社の最新技術などを紹介する展示会「docomo Open House 2021」をオンラインで開催した。その中で展示物の1つとして、同社が研究開発中の「羽根のないドローン」が出展されていた。風船型の機体でマイクロブロアによる空気噴出によって飛行する。通常のドローンと異なりプロペラや翼を持たないため、高い安全性と静音性を実現。主に、屋内飛行での運用を想定する。
マイクロブロアを推力に安全飛行
「羽根のないドローン」はNTTドコモが2019年4月に発表した屋内向けの風船型ドローンである。同年に開催された「ニコニコ超会議」でも展示された。
機体サイズは最大直径が90cm。機体重量は約200g前後だが、カメラの搭載などで多少上下する。最大飛行速度は毎秒約20cmで、飛行時間は約1〜2時間。遠隔操作に対応しており、無線信号を遮る障害物がないエリアなら数百m程度は操縦者から離れて飛行ができる。
ヘリウムガスを充填(じゅうてん)した球体型の風船に、超音波振動モジュールを応用してエアポンプのように駆動させる機構を持つマイクロブロア(村田製作所製のMZB1001T02)を取り付けている。人間が触れても分からないほど微小なμm単位での風を起こして推力を生み、風船の浮力と合わせて飛行する。またマイクロブロアの駆動周波数は超音波域のため、駆動音を最小限に抑えており静音性が高い。
こうした特徴を持つため、屋内飛行にも適する。プロペラや翼が搭載されている一般的なドローンは、翼が人間や物など接触するとケガや破損につながる恐れがある上、駆動音も大きいといった問題がある。このため、人間に接近する可能性が高い屋内使用時には、運用の仕方に一定の制限や工夫が必要になるが、羽根のないドローンであればこれらの課題を解決できる。
具体的な活用方法としては、空中から撮影した映像を画像解析技術で処理することで、屋内での空中監視、警備業務などを想定する。また、機体側面に広告をプリントしてイベント会場やコンサートホールなどの屋内で飛ばすことで、“空飛ぶ広告”としての運用も可能。この他、プロジェクションマッピング技術で機体に映像を投影することで、空間演出ソリューションなどにも使用できる。
NTTドコモの担当者は「現状では推力が弱いため、エアコンなどの弱い風でも流されてしまうのが難点だ。推力を向上させるなどで今後改善していく。また、ドローン市場のニーズを見つつではあるが、飛行の自律化も検討していきたい」とコメントした。
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