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ドローン開発に必要な機能を全て統合、MathWorksのモデルベース開発ツールドローン(1/2 ページ)

今後増加が予想される自律飛行型ドローンだが、研究開発現場では、実機での飛行テストを通じたアルゴリズム検証が困難であるなどいくつかの課題を抱えている。こうした課題を解決する手法として、近年はモデルベース開発を用いたドローン開発に注目が集まっている。MathWorksが、MATLABやSimulinkのオプション製品であるドローン統合開発環境として発表した「UAV Toolbox」も、モデルベース開発に対応した開発ツールの1つだ。従来のドローン開発手法における課題点とは何か、それらをUAV Toolboxを用いることでどのように解決できるのか。MathWorks担当者に話を聞いた。

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 設備の保守点検や実地測量、航空写真の撮影、測量といった分野で、企業や地方自治体によるドローン導入が進む。また、一部の国内企業は、配送分野でのドローン実用化を目指して過疎地などでの実証実験を繰り返し行っている。こうした流れの中で、ドローンの導入効果をさらに高めるため、自律飛行型ドローンの研究開発が加速している状況だ。

 ただ、自律飛行の研究開発はいくつもの課題を抱えている。その1つが、実機での飛行テストを通じたアルゴリズム検証の困難さである。テストの準備に時間がかかるだけでなく、万が一、アルゴリズムに問題があれば、地形などの障害物との接触や、最悪の場合、機体が墜落するリスクもあるからだ。こうした課題を解決する手法として、近年は仮想環境内で飛行テストを行うシミュレーションの有効活用に大きな期待が集まっている。また、これらのシミュレーション活用の価値を最大化する開発手法として、モデルベース開発によるドローン開発に注目が集まっている。

 MathWorksが2020年9月に発表した、MATLABやSimulinkのオプション製品であるドローン統合開発環境「UAV Toolbox」(UAV:無人航空機)も、モデルベース開発に対応した開発ツールの1つだ。従来のドローン開発手法における課題点とは何か、それらをUAV Toolboxを用いることでどのように解決できるのか。MathWorks ロボティクス・自律システムインダストリーマネージャーの能戸フレッド氏に話を聞いた。


モデルベース開発に対応したドローン統合開発環境「UAV Toolbox」*出典:MathWorks[クリックして拡大]

モデルベース開発で手戻り作業を削減


MathWorksの能戸フレッド氏

 従来のドローン開発のプロセスでは、アルゴリズムを作成、コーディングした後、すぐにドローン機体への実装と実機実験を行い、そこで炙り出した問題点を修正して、再び実機実験を行う、という工程を繰り返していた。この従来型のプロセスについて、能戸氏は「この手法は一見すると開発のループが小さくまとまっていて効率性が高いように見えるが、実際にはコーディング時のデバッグ作業や飛行テストの準備などで作業工数がかさむ。また、テストで発生した問題の再現性が保証されないという問題もある。そもそも、フィードバックのループが一度で済むことはまれで、基本的には何度も回さなければならない」と指摘する。

 これに対してUAV Toolboxで実現可能なモデルベース開発では、要求仕様からモデリングした機体を用いてシミュレーション環境内で飛行テストを行い、アルゴリズムの修正を繰り返す。現実空間で飛行テストを行う前にテストと検証のタスクを迅速に行える。これによって、手戻り作業を削減できる。また、UAV Toolboxの場合は「MATLAB、Simulinkと連携させることでコーディングエラーを削減し、より高品質で安全なシステムが開発できる」という。


従来の開発手法とモデルベース開発の違い*出典:MathWorks[クリックして拡大]

 加えてUAV Toolboxのシミュレーション環境は、自律飛行型ドローンに必要となる各種カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)、GPSなどのセンサーシミュレーションにも対応している。「自律飛行型ドローンはセンサーを前提とした認知機能の搭載や、飛行計画の策定が必要になる。これまでにもMathWorksは、クルマの自動運転用ソフトウェア開発ツールなどにセンサーシミュレーションに対応する機能を持たせていたが、ドローン開発の用途では今回のUAV Toolboxで初めて使えるようにした」(能戸氏)。

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