写真1枚で撮影場所や被写体の大きさを自動認識するAI、東芝がプラント業務で活用:製造現場向けAI技術(2/2 ページ)
東芝は2021年2月1日、1枚の写真から撮影場所や被写体の大きさを自動認識し、そのデータを管理できるAI(人工知能)を開発したと発表した。発電プラント施設などの巡視や保守点検作業の自動化などに貢献する。
GPSが使えない室内でも画像1枚で位置と方向を認識
「位置認識AI」は、GPSが使えない室内でも画像1枚で位置と方向を認識できるという技術だ。活用の前に、使用領域を約1m間隔で撮影し、その映像を合成する形で3Dモデルの位置データベースを作成する。使用時は、撮影画像の特徴点を抽出し、これを位置データベースの画像と照合する。そして画素単位で対応する点を判別して計算することで、位置と向きを認識するという仕組みである。
位置認識の方法としては、屋外ではGPS、屋内では無線基地局やマーカーを使う方法などが既に存在する。しかし、GPSでは屋内では認識できない他、無線基地局やマーカーでは追加の機材や敷設の負担などがあり、導入が難しいケースがある。新技術はこれらの課題から導入が難しかった場所でも適用できるというのが特徴だ。位置データベースの作成には事前にプラント内を撮影する必要があるが「こちらは人やAGVが動画撮影をしながらプラント内を回ることで一括撮影することも可能だ。またレーザースキャナーで取得した3Dモデルなども使用できる」(関氏)としている。
一方で「立体認識AI」は、カメラのレンズと焦点によって発生するボケ情報を解析することで、奥行きの距離を判別する技術である。事前にカメラ単体のレンズとボケの関係性を学習し、それにより、ボケ味によっての立体情報を認識できるようにする。これにより、プラントの損傷箇所などの撮影をした時に大きさも同時に示せるようにしたものだ。
「異常検知AI」なども組み合わせ点検業務をさらに効率化
今後は、これらの技術を東芝エネルギーシステムズのIoTプラットフォームに組み込み、現場での実証を進めて完成度を高めていく。2022年の実用化を目指すとしている。また、現在の「位置認識AI」と「立体認識AI」に加え、ひび割れなどの情報を自動で見つけてアラートを発報するような「異常検知AI」やデータの蓄積から将来を予測する「経年変化抽出・予測AI」なども組み合わせていく計画だ。これらをまとめた形で「点検情報管理AI」として提供できるようにし、点検業務の負荷軽減に貢献する方針である。
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