正常時の波形データ学習のみで異常検知するAI、工場現場などでの適用目指す:FAニュース
東芝は、正常時の波形データのみで学習し、異常を検知する説明性の高いAI「OCLTS」を開発した。機械学習によって設備の異常を検知する技術の検知精度を9%向上させるとともに、異常を判断した根拠を提示する。
東芝は2018年12月13日、正常時の波形データのみで学習し、異常を検知する説明性の高いAI(人工知能)「One-Class Learning Time-series Shapelets(OCLTS)」を発表した。機械学習により、設備の異常を検知する技術の検知精度を従来比9%向上させた他、異常を判断した根拠を提示する。
OCLTSは、まれにしか異常が発生しない場合も、多数のセンサーによって収集する正常時の時系列データのみから異常検知モデルを構築し、未知の異常を含めて高精度に検知する。また、正常時に繰り返し現れる部分的な波形パターン(正常波形パターン)を抽出。異常を正常波形パターンからの差異に基づいて検知することで、異常と判定した根拠を提示する。
OCLTSは最初に、波形パターン(Shapelets)として正常時に特徴的な複数の経時変化を自動抽出する。次に、これらの正常波形パターンで算出される正常範囲と、検査時の波形データを比較。AIは正常範囲から逸脱する場合に設備に異常があると判断するため、AIが異常状態を未経験でも設備の異常を検知できる。波形と比較し、差異が出た時期、大きさ、形状から、異常発生の原因究明につなげられる。
また、正常と異常の分類をOne-Class Support Vector Machine(OCSVM)に基づいて学習し、分類の境界が複雑でも適用できる。学習アルゴリズムを高速化し、これまでの技術では時系列の長さの二乗分必要だった計算量を時系列の長さの一乗分まで削減できるため、短期間でAIに学習させられる。
特に異常を判断した根拠の説明性が求められる工場や、社会インフラの設備の異常検知精度を向上し、設備の稼働率向上と、保守管理コストを削減する効果が期待できる。今後は、さまざまな時系列データに対しての有効性を確認し、工場や社会インフラなどの現場に適用することを目指すとしている。
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