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オムロンは売上総利益率が過去最高へ、ロボットとの統合制御機器で成長加速製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

オムロンは2021年1月27日、2021年3月期(2020年度)第3四半期の業績を発表するとともに、業績に大きく貢献する制御機器事業とヘルスケア事業の方向性について説明を行った。中国市場の期待以上の需要増とともに、制御機器事業のソリューションビジネス化、ヘルスケア事業の血圧計需要の増加などの好影響から、2020年度第3四半期(2020年4〜12月)は増益を実現し、通期見通しも上方修正を行っている。

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 今回の決算発表では、好調を持続する制御機器事業とヘルスケア事業における成長戦略についても説明が行われた。本稿では、制御機器事業の成長戦略について紹介する。

ソリューション化で好調を持続する制御機器事業

 制御機器事業では、ここ数年独自の価値創造コンセプトとして「i-Automation!(アイオートメーション)」を掲げて、機器単体のモノ売りビジネスからソリューションをベースとしたコト売りビジネスへのシフトを進めている。このソリューション化による利益率向上がコロナ禍で苦しむ中での業績にも貢献した形だ。

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オムロン 執行役員副社長 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長の宮永裕氏

 「i-Automation!」の「i」は、「integrated(制御進化)」「intelligent(知能化)」「interactive(人と機械の新しい協調)」の3つを示しており、これらのコンセプトに合わせたハードウェアと制御アプリケーションを組み合わせ、製造現場の課題を解決するソリューションとして提供する。現在までに170以上の制御アプリケーションを用意している他、これらを生み出すために顧客とともに課題解決を目指す共創拠点「オートメーションセンタ(ATC)」を世界37カ所で整備。これらの拠点で活躍するセールスエンジニアは1000人に達するなど、ビジネスモデル変革に積極的に取り組んできた。

 オムロン 執行役員副社長 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長の宮永裕氏は「ソリューションとして価値を提供するビジネスモデルがポイントだと仮説を立てビジネス変革を進めてきたが、その方向性が正しかったということが証明できたと感じている。ビジネスモデル変革により、値引き圧力や価格調整に対して強くなり、利益面での貢献にもつながっている。例えば、好調が続く中国は値下げ圧力が強い市場だが、一方で新しい技術への期待も高く、ソリューションとして課題解決に直結する形で提供することで、価格圧力を受けずに提供する形ができている」と手応えについて語っている。

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i-Automation!の制御アプリケーション群(クリックで拡大)出典:オムロン

今後の成長のカギを握る「ロボット統合コントローラー」

 さらにこれらの好調を持続し「新たなゲームチェンジにつながる」(宮永氏)とする戦略製品が「ロボット統合コントローラー」である。オムロンでは制御機器の製品ポートフォリオの豊富さを示す「Input(入力機器)」「Logic(制御機器)」「Output(出力機器)」「Robot(ロボット)」「Safety(安全関連機器)」の頭文字をとった「ILOR+S」を強みとして訴えてきた。

 ソリューション化は他のオートメーションメーカーも進めているが「製造現場におけるこれだけ豊富なポートフォリオを抱えるのはオムロン以外にはない。それだけさまざまな課題解決を実現するアプリケーションを用意できるということだ」と宮永氏は強みについて語っている。

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オムロンの核となる「ILOR+S」(クリックで拡大)出典:オムロン

 ただ、従来これらのハードウェアでは、それぞれで制御を行う言語やコントローラーが異なる場合が多く、変換や調整などが必要だった。特にロボットと製造機器の制御機器とは言語が異なっており、円滑な動作が行えない場合があった。そこでこれらを統合し一元的に制御を行えるようにしたのが「ロボット統合コントローラー」である。

 宮永氏は「統合することでライン立ち上げ時のシミュレーションなども簡単に行える。また、従来は個々に取得する必要があった機器情報なども一括で取得できるようになり、リモートメンテナンスなどにも活用できる」と価値について述べている。

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「ロボット統合コントローラー」の意義(クリックで拡大)出典:オムロン

 宮永氏は「多くの製造業では人手不足により、製造ラインの全体的なシステムを立ち上げたり、メンテナンスを行ったり、改善活動を行ったりする現場の技術者が不足している。これは日本に限った話ではなく、中国でも高齢化で不足している状況だ。FA業界にとってはチャンスで、これらを捉えるようなソリューションが重要になっている。ロボット統合コントローラーで工程の前と後ろをつないでいくことで、従来は見えなかったニーズが見えるようになり、新たな課題なども含め継続的、多面的なビジネスへとつながる可能性がある。そういう意味で、新たな成長軌道に乗せるための重要なタイミングだと考えている」と今後の展望を語っている。

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