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自転車のタイヤを回す「巻き掛け伝動機構」とギアチェンジの仕組み身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門(8)(3/3 ページ)

身近にあるモノを題材に、それがどのような仕組みで動き、どんな機構が使われているのかを分かりやすく解説する連載。今回は、自転車のタイヤを回す「巻き掛け伝動機構」とギアチェンジの仕組みについて取り上げる。

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ペダルを1回転させたとき、後輪が何回転するか

 次に、速度伝達比を見てみましょう。速度伝達比とは、最初に駆動する駆動歯車と最後の被動歯車の回転比のことです。あまり難しい言葉を使うと分かりにくくなるので、今回は“ペダルを1回転させたとき、後輪が何回転するか”だけに注目してみます。

※画像はイメージです(pia_ch/iStock)
※画像はイメージです(pia_ch/iStock)

 これは、スプロケットの歯数で比べるのが一番分かりやすいでしょう。ペダル側の歯が1つ分回れば、必ず後輪側も歯が1つ分回るので、ペダル側に歯が10個、後輪側に歯が5個であれば、ペダルが1回転すると後輪は2回転することになります。

 先ほど示した図5図6には歯数を記載していませんが、これはピッチ円でも同じことが言えますので、支点〜力点、支点〜作用点をそれぞれのピッチ円半径として計算してみます。

 図5はペダル側のピッチ円直径が20cm、後輪側が4cmになります。つまり、ペダル1回転に付き、後輪は5回転します。

 図6はペダル側のピッチ円直径が10cm、後輪側も同じく10cmになりますので、ペダル1回転であれば、後輪も同じく1回転となります。

 後輪の回転分だけ自転車が進むとすると、図5のケースがペダル1回転で約11m進むのに対して、図6のケースでは約2.2mしか進めないことになります。これでは、いくらペダルが軽くてもギアを上げたくなりますよね。

 つまり、平地などでスピードを出したい場合は“フロントが大きく、リアが小さいスプロケット”を、ペダルを軽くして坂道を楽に上りたいときは“フロントが小さく、リアが大きいスプロケット”を選べば、最適な力で自転車を漕ぐことができます。



 以上、今回は巻き掛け伝動機構、そして自転車のギアチェンジの仕組みについて解説しました。もし、自転車に乗る機会があれば、本稿の内容を思い出しつつ、ギアチェンジしながらペダルの重さの変化を楽しんでみてください。それではまた次回お会いしましょう! (次回へ続く

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筆者プロフィール

久保田昌希

1981年長野県生まれ。大学卒業後、大手住宅メーカーの営業職に就くも退職。その後に就いた派遣コーディネーターの仕事で製造ラインの人員管理などを行い製造業に関わりを持つ。その中でもっと直接モノづくりに関わってみたい、自分で製品を生み出してみたいという思いが強くなり、リーマンショックを機に退職。職業訓練で3D CADや製図、旋盤やマシニングセンターの使い方を学んだ後、現在のプロノハーツに入社。比較的早い段階から3Dプリンタを自由に使える環境に身を置けたため、設計をしてはすぐに社内試作を繰り返し、お客さまからもたくさんのご指導を頂きながら、現在では医療機器からVRゴーグルまでさまざまな製品の開発、試作品の製作を受託。その経験を生かし子供たちに向けた3D CADや3Dプリンタの使い方講座なども行っている。


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