検索
連載

自転車のタイヤを回す「巻き掛け伝動機構」とギアチェンジの仕組み身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門(8)(2/3 ページ)

身近にあるモノを題材に、それがどのような仕組みで動き、どんな機構が使われているのかを分かりやすく解説する連載。今回は、自転車のタイヤを回す「巻き掛け伝動機構」とギアチェンジの仕組みについて取り上げる。

Share
Tweet
LINE
Hatena

なぜギアを変えると、ペダルが重くなったり軽くなったりするのか

 学生時代から約20年ぶりに自分の自転車を手に入れたわけですが、実際に乗ってみると本当に便利な乗り物だなと感心します。細かくギアを変えながら進んでいくと坂道も楽々ですし、平たんな道ではかなりのスピードを出すことができます。

 学生のころは何にも考えずに乗っていたので、なぜギアを上げるとペダルが重たくなりスピードが増すのか、逆にギアを下げるとスピードが落ち、坂道を楽に上ることができるのかをあまり深く考えたことはありませんでした。

 今回、筆者が購入した自転車には、フロント(ペダル側)に3枚、リア(後輪側)に7枚、大きさの異なるスプロケットが付いており、組み合わせは全部で21通りです。どういった組み合わせでスピードが上がるのか、またはペダルが軽くなるのかは簡単なテコの原理と速度伝達比で説明できます。

フロントが一番大きいスプロケット、リアが一番小さいスプロケット

 では、実際に図を見ながら確認していきましょう。図5は、フロントが一番大きいスプロケット、リアが一番小さいスプロケットにチェーンが掛かった状態を示しています。仮に後輪を回すのに10kgの力が必要だとすると、ペダルを回すには何kgの力が必要になるでしょうか?(※1

※1:本稿では、それぞれの値を分かりやすい数字に置き換えているため、実際の自転車とは異なります。

ペダルを回すには何kgの力が必要か(ケース1)
図5 ペダルを回すには何kgの力が必要か(ケース1) [クリックで拡大]

 ここでは、2つのテコが組み合わさっています。支点、力点、作用点は図5に示した通りです。まず、後輪側から見ていきましょう。作用点である後輪と地面が接する部分に10kgの力が加われば自転車が進むので、後輪を回すために力点に必要な力を○kgとすると、以下の式が成り立ちます(ここでは摩擦抵抗など、細かいことは全部無視しています)。

【後輪側】
10kg×35cm=○kg×2cm
○kg=175kg

 続いてペダル側です。前輪の作用点で必要な力は、後輪の力点を動かす力と同じなので175kgです。同様に、ペダルを漕ぐのに必要な力を○kgとすると、

【ペダル側】
175kg×10cm=○kg×20cm
○kg=87.5kg

となります。

 つまり、この組み合わせではペダルに87.5kgの力を加えると、自転車が動き出すことになります。

フロントが一番小さいスプロケット、リアが一番大きいスプロケット

 それでは次の組み合わせはどうでしょうか。図6はフロントが一番小さく、リアが一番大きい組み合わせです。

ペダルを回すには何kgの力が必要か(ケース2)
図6 ペダルを回すには何kgの力が必要か(ケース2) [クリックで拡大]

 先ほどと同じように計算すると、後輪側の力点に必要な力は、

【後輪側】
10kg×35cm=○kg×5cm
○kg=70kg

となり、ペダル側は

【ペダル側】
70kg×5cm=○kg×20cm
○kg=17.5kg

となります。

 つまり、この組み合わせでは17.5kgの力でペダルを踏めば自転車が動き出します。図5パターンの5分の1の力です。この結果だけを見ると、ずっとこの組み合わせでよいのではないかと思うかもしれません。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る