架台内の雰囲気温度の上昇による影響を検証する:実例で学ぶステップアップ設計者CAE(8)(3/3 ページ)
初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第8回は、架台内の雰囲気温度の上昇による影響を検証する。
4.架台検証のまとめ
ファンによる強制排気の有無の比較を行うと、その分布の傾向は異なり、排気ありの方が架台ベース面の温度が低いことが分かります。なお、架台の内部構造については、その傾向が同じことから、対流や輻射よりも固体の熱伝導の影響が大きいということがいえそうです。
今回の解析は、筆者がこれまで業務で経験してきた架台の検証をテーマに、ひとまず、電装盤そのものを一塊の熱源として考えましたが、電装盤内の機器を熱源として、架台内の排熱を検証することも可能です。
いずれにしても、熱源となる電源系や制御系の電装盤によって上昇する架台内の雰囲気温度の影響を検証できるということは、強度と同様に問題となることの多い、“熱問題”に対し、設計段階で取り組めるということを意味します。
5.検証
CAEは既知データから結果データを得るものなので、モデル形状やメッシュ精度による影響もあります。実際、今回の架台の検証で使用した解析モデルと詳細設計のモデル形状は異なりますし、解析設定上、反射率はデフォルト値を使用しているため、厳密に言えば現実とは異なります。
また、解析の計算部については、ハイエンドCAEのように理論式を適用するものもありますが、ミッドレンジCAEでこうした計算式を編集し、解析した経験は筆者にはありません。
設計者CAEの対象物は、詳細設計を経て現実の製作が行われます。この現実世界での実物による実験を行う時間を厳しい納期の中で確保することは容易ではありません。しかし、机上での解析結果の妥当性を検証する上で、実物の実験結果を得ることはさらなるCAEの信頼性、精度向上のために必要なことでもあります。
次回は再び構造解析に戻ります、お楽しみに! (次回へ続く)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- かつてCAEを軽く見ていた設計者がその必要性について説く
かつて2次元大好き信者だった筆者が“CAEの重要性”に気が付いた経緯を踏まえつつ、話題の「設計者CAE」の基本的な考え方について解説する連載。第1回は、CAEの基礎として、その役割やメリットを紹介するとともに、設計者CAEを実践することで得られる効果について取り上げる。 - 経験則に頼らない根拠ある設計を提案できる「設計者CAE」の活用メリット
かつて2次元大好き信者だった筆者が“CAEの重要性”に気が付いた経緯を踏まえつつ、話題の「設計者CAE」の基本的な考え方について解説する連載。第2回は、なぜバリバリの2次元信者だった筆者が“CAEの必要性”を痛感したのか? その決め手となった当時の心境の変化、意識の変遷について掘り下げる。 - CAE普及のためには設計と現場の“両輪”で3D推進を急ぐべし!
かつて2次元大好き信者だった筆者が“CAEの重要性”に気が付いた経緯を踏まえつつ、話題の「設計者CAE」の基本的な考え方について解説する連載。第3回は、設計も現場も1つになって、「総知総力」を挙げたモノづくりを実現するためのヒントを提示する。 - 設計者CAEお悩み相談室
「CAEの社内マニュアルは、本当に必要ですか?」――そう尋ねられたら、あなたはどう答える? ぶっちゃけ現場トーク、2回目。 - 設計者CAEも、そろそろレベルアップしなくちゃ!
設計者向けの解析ソフトウェア(CAE)について、関係者たちが一堂に会してとことん討論します。さてあなたの使っているソフトウェアのベンダさんは、出てくるでしょうか。 - 設計者さん、解析業務の他人任せはやめましょう
カタログにひかれて買うものの、いつの間にかホコリを被ってしまうCAE。そこに潜む本当の問題とは? CAEベンダのマーケティング担当者が本音を語る。