「小さく始める」が「小さいまま終わり」に、SAPが第4次産業革命で訴える危機感:第4次産業革命の現在地(2/2 ページ)
SAPジャパンは2020年9月にインダストリー4.0戦略の具現化を支援する戦略施設「Industry 4.Now HUB TOKYO」を設立した。同施設設立の狙いと、日本におけるインダストリー4.0の推進状況について、SAP Labs JapanのHead of Digital Supply Chain Managementである鈴木章二氏に話を聞いた。
「Industry 4.Now HUB TOKYO」で実際に行えること
MONOist これらの課題解決を進める意味で「Industry 4.Now HUB TOKYO」では実際にどういう取り組みを行うのでしょうか。
鈴木氏 「Industry 4.Now HUB TOKYO」では、ワークショップを通じて問題意識の顕在化やアイデアの創出を支援する。新たな発想が生まれやすいようにモノづくりの各工程をイメージした映像を360度で展開する部屋なども用意している。
また、具体的に工場システムからエンタープライズシステムまでを連携させたショーケースを用意している。日本では、三菱電機と協力して産業用ロボットがバルブヘッドユニットを組み立てる際に顧客注文時の選定仕様にリアルタイムで対応するシステムを構築している。OPC UAに対応したSAPソリューションとEdgecrossに対応した三菱電機の産業用PC、PLC、協働ロボットを連携させている。
MONOist ショーケースでは具体的にはどういうことを訴求したいと考えますか。
鈴木氏 ショーケースはバルブヘッドユニットの組み立てを、受注に合わせて作るマスカスタマイゼーションをイメージできる仕組みとなっている。作業そのものは非常にシンプルなもので、そのまま現場で使えるわけではない。ただ、ポイントはこれらの作業を支えるバックヤードのシステムが非常にシンプルに統合できているという点である。
現場のロボットコントローラーをSAPデジタルマニュファクチャリングクラウドにつなぐことで、受発注情報を統合する基幹システムまで一貫して情報連携を行えるようにしている。それも特に大きなカスタマイズをすることなく行える。
具体的には「S/4HANA」で受けた仕様と注文を基に、SAPデジタルマニュファクチャリングクラウドにより製造指示を作成する。その指示を基にロボットが組み立てを行う。組み合立て作業が完了すると使用部品を確認し自動で在庫の引き落とし処理や製造指図の自動更新などを行うという流れだ。
先述した危機感ではないが、より大きなシナリオが実際に動く様子を示すことで、局所的な取り組みを、より大きく結んでいく発想や仕組み作りをサポートしていくのが、実際に稼働するショーケースを作った狙いである。
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