かくして「はやぶさ2」は帰還し再び旅立った、完璧な成果は3号機につながるのか:次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(19)(2/5 ページ)
小惑星探査機「はやぶさ2」が地球へ帰還し、予定通り再突入カプセルを回収することに成功した。カプセルからはグラム単位という大量のサンプルも確認されている。まさに「完璧」と言っていい成果だ。本稿では、はやぶさ2の帰還の模様や、再び地球から旅立って挑む「拡張ミッション」、これらの技術がどう生かされていくかについて解説する。
アンカーのバトンは地上へ渡った
探査機から分離されたカプセルは、予定通りに飛行し、約12時間後の12月6日2時28分に地球大気圏へ再突入。2時32分にビーコンを受信、つまり高度10kmでパラシュートを開き、2時54分に着陸した模様だ。3時7分には着陸地点を特定し、回収班のヘリコプターが出発、4時47分、無事にカプセルを発見した。全て予定通りだった。
カプセルは初号機でも正常に機能したが、はやぶさ2でも完璧だった。このカプセルの仕組みについては、本連載で2回にわたって詳しく紹介しているので、興味がある方は参照してほしい。
地上でカプセルを回収するために、最も重要なのは、着陸地点を正確に推定することだ。はやぶさ2では、この部分も初号機から強化された。
最も基本となるのは、カプセルが出すビーコンを利用した方向探索だ。着陸予定エリアの周囲に、複数のアンテナを配置。各局がビーコンの方角を調べ、その交点付近にカプセルがある、というわけだ。初号機ではアンテナが4局だったが、はやぶさ2では5局に強化されている。
もしビーコンが出なかったときのために、火球となったカプセルの光学観測を行う。雲が出ていると地上から観測できないので、同時に航空機による観測も行う。
また、はやぶさ2では、新たにマリンレーダーによる方向探索を追加した。これは、パラシュートで反射する電波を利用するため、ビーコンが出ていなくても、パラシュートさえ展開できていれば、カプセルの追跡が可能だ。
着陸してからは、ヘリコプターを飛ばし、ビーコンも見ながら、上空から目視でカプセルを探す。はやぶさ2ではさらに、ヘリコプターを出せなかったときのバックアップとして、ドローンによる探索を追加した。ドローンは指定したエリアを隙間なく撮影することができるので、こうした探索には適している。
まさに、6段構えの万全の体制だった。結果的には、カプセルが正常に機能し、あっさり場所を特定することができたのだが、そういった成功の陰には、こうした地道で入念な準備があったことは覚えておきたい。
カプセルから取り出したサンプルキャッチャーの重量を計測した結果、打ち上げ前の重量との差分から、中には約5.4gものサンプルが入っていることが明らかになった。もともと、想定していたのは100mgだったので、ミッションとして「大成功」といえる。本連載の記事タイトルで「グラム単位も!?」と書いたが、これが現実になった。
今後、半年程度をかけ、サンプル1つ1つのカタログ化を行ってから、初期分析や詳細分析を開始する予定。C型小惑星からは、有機物や水の発見が期待されている。2021年は、どんな科学成果が発表されるのか、楽しみなところだ。
ところで、今回は探査機本体のカメラを使い、再突入時のカプセルを宇宙から撮影することにも挑戦していた。広角カメラ「ONC-W2」のため、写ったとしても「点」だろうと予測されていたものの、放射線帯の通過時でノイズが多いこともあり、まだ特定には至っていない。こちらも続報を待ちたいところだ。
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