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かくして「はやぶさ2」は帰還し再び旅立った、完璧な成果は3号機につながるのか次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(19)(1/5 ページ)

小惑星探査機「はやぶさ2」が地球へ帰還し、予定通り再突入カプセルを回収することに成功した。カプセルからはグラム単位という大量のサンプルも確認されている。まさに「完璧」と言っていい成果だ。本稿では、はやぶさ2の帰還の模様や、再び地球から旅立って挑む「拡張ミッション」、これらの技術がどう生かされていくかについて解説する。

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 既に各メディアで報じられているように、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」は2020年12月6日未明に地球へ帰還し、予定通り、再突入カプセルを回収することに成功した。カプセルの中からは、小惑星リュウグウ由来のサンプルが確認されており、プロジェクトのミッションは完全に達成された。まさに「完璧」と言っていい。

サンプルキャッチャーA室から見つかった大量のサンプル
サンプルキャッチャーA室から見つかった大量のサンプル(クリックで拡大) 出典:JAXA

 この地球帰還運用では、どんなイベントがあったのか。プロジェクトの今後の予定はどうなっているのか。本稿では、そのあたりのことをまとめてみたい。

⇒連載『次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う』バックナンバー

最後までパーフェクトだった運用

 はやぶさ初号機の10年前の地球帰還で印象的だったのは、カプセルとともに探査機本体まで一緒に再突入し、火球となったシーンだろう。しかし今回は、再突入したのはカプセルのみ。探査機本体は地球のそばを通り抜け、新たな探査の旅に出発している。これが、初号機の地球帰還との大きな違いだ。

 初号機と異なり、はやぶさ2はここまでノートラブルで、機体は健全な状態だった。それに対し、初号機は満身創痍(そうい)。燃料漏れで化学推進系(RCS)も使えず、なんとか地球にたどり着いたという状況で、本体の再突入を回避するような余力は既になかった。今回の地球帰還こそ、初号機が本来見せたかった運用なのだ。

初号機の再突入
初号機の再突入。感動的ではあったが、これは本来見せたいものではなかった(クリックで拡大) 出典:NASA、JAXA

 はやぶさ2は、2020年10月22日からRCSを使った軌道制御(TCM)を開始。この軌道制御は、合計5回実施するのだが、まず注目されたのは、3回目の「TCM-3」だ。ここまで、安全確保のため、はやぶさ2は地球のすぐそばを通過する軌道を飛行していた。システムの健全性が確認されたことで、進路をオーストラリア南部のウーメラへ変更、帰還が確実となった。

 次のビッグイベントは、同年12月5日のカプセル分離だ。探査機の軌道は極めて正確に誘導できており、ここで予定通り分離できさえすれば、カプセルが着陸予定エリアに降りてくるのはほぼ間違いない。ただ、カプセル分離は事前にテストできない一発勝負。地球はどんどん迫っており、やり直す時間も少ない、非常にクリティカルな運用だった。

 カプセル分離は14時30分に実施。分離時の反動などが探査機側で確認できたことから、わずか5分ほどで、分離の成功が確実であることが分かった。これをもって、探査機本体の任務は全て完了。本当に、はやぶさ2のミッションは、リュウグウでの困難があったものの、最後まで完璧だった。

カプセル分離を確認した瞬間、プロジェクトマネジャーの津田雄一氏からはガッツポーズが
カプセル分離を確認した瞬間、プロジェクトマネジャーの津田雄一氏からはガッツポーズが(クリックで拡大) 出典:JAXA

 次々と大きなミッションを成功させるNASAなどを見ると簡単に思えるかもしれないが、深宇宙探査の難易度は非常に高い。日本はこれまで、火星探査機「のぞみ」(周回軌道投入を断念)、はやぶさ初号機、金星探査機「あかつき」(最初の周回軌道投入に失敗し、5年後に到着)と、苦難の歴史が続いていた。

 はやぶさ2は、トラブルがほとんどなかったという意味においても、画期的なプロジェクトだった。JAXA 宇宙科学研究所 所長の國中均氏は、帰還後の記者会見で「惑星探査の分野において、次のステージに上がることができた」と、感慨深げに語った。この知見は今後のプロジェクトに大いに生かせるだろう。

カプセル分離・TCM-5時の実況ライブ(クリックで再生) 出典:JAXA

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