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かくして「はやぶさ2」は帰還し再び旅立った、完璧な成果は3号機につながるのか次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(19)(3/5 ページ)

小惑星探査機「はやぶさ2」が地球へ帰還し、予定通り再突入カプセルを回収することに成功した。カプセルからはグラム単位という大量のサンプルも確認されている。まさに「完璧」と言っていい成果だ。本稿では、はやぶさ2の帰還の模様や、再び地球から旅立って挑む「拡張ミッション」、これらの技術がどう生かされていくかについて解説する。

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探査機の新たな旅の目的地は?

 探査機本体の今後についても紹介しておこう。探査機は、カプセル分離の1時間後の12月5日15時30分から16時30分まで、3回に分けて、「TCM-5」の噴射を実施、地球からの退避に成功した。前述のカプセル撮影の2分後に地球へ最接近、スイングバイで進路を変え、新たな旅に出発した。

 はやぶさ2の主ミッションは、これまで実施してきた小惑星リュウグウへの往復探査だった。それに対し、ここからの新たな探査は「拡張ミッション」と呼ばれる。はやぶさ2の推進剤であるキセノンは、まだ半分以上が残っている。その他の各機器も今のところ問題はなく、新しい旅への余力は十分ある。

 拡張ミッションのメリットは、なんと言っても、格安で探査を行うことができるということだ。探査機は既に軌道上にあるので、製造や打ち上げは不要。地上の運用費程度しかコストがかからない。また、既に当初の目的は果たしており、いわば“減価償却済み”。失敗を恐れず、挑戦的なことをしやすい環境にある。

 とはいえ、どこにでも自由に行けるわけではない。燃費に優れるイオンエンジンであっても、残りの推進剤でランデブーできる天体は限られる。それに、どんな天体でも良いわけではなく、行く意味、つまり科学的な面白さもなければいけない。

 JAXAは、候補となる1万8002の天体から、(1)2031年末までに到着できる、(2)太陽から遠すぎない、(3)軌道が正確に分かっている、といった条件で、絞り込みを実施。スコアの高かった2天体、小惑星「1998 KY26」と「2001 AV43」が最終候補として残った。

候補天体の探索
候補天体の探索。到達できる天体を調べ、その中から2つまで絞り込んだ(クリックで拡大) 出典:JAXA

 これら2つの小惑星に共通するのは、直径30〜40mと、非常に小さいこと。リュウグウやイトカワも小さい小惑星なのだが、それよりもさらに1桁小さい。これほど小さい小惑星に到達した探査機は過去に例がなく、実現すれば世界初となる可能性がある。

 そして、自転周期が10分程度と、高速であることも大きな特徴だ。地上の感覚だと、1周が10分というのは高速と思えないが、こんな小さな小惑星だと、重力よりも遠心力の方が大きいという、不思議な世界になる。表面に何かモノを置いたとしても、そこにとどまることはできず、浮き上がってしまうのだ。

 そのため、表面に砂はなく、1枚岩の可能性が高いと考えられているが、ラブルパイル(集積型)ではないとも言い切れない。まさに行ってみないと分からない世界で、科学的にも非常に興味がある。

 こうした天体の探査は、プラネタリーディフェンス(スペースガード)への貢献も期待される。数10mクラスの小惑星は、地上に大きな被害をもたらすのに十分なサイズで、衝突頻度も100〜200年に1回程度と比較的大きい。今後危険な小惑星が見つかったとき、壊すにしても軌道を変えるにしても、まずは知見を高めておくことが重要だ。

 2つの小惑星のうち、最終的に目的地として選ばれたのは1998 KY26の方だった。こちらはリュウグウと同じC型小惑星の可能性があり、はやぶさ2の観測装置を生かしやすい。一方、2001 AV43は途中で金星も観測できるという魅力があったが、金星軌道まで太陽に接近するため、熱的に厳しいという問題が大きかった。

拡張ミッションの目的地となった「1998 KY26」
拡張ミッションの目的地となった「1998 KY26」。探査機と比べると、その小ささが分かる(クリックで拡大) 出典:Auburn University、JAXA

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