かくして「はやぶさ2」は帰還し再び旅立った、完璧な成果は3号機につながるのか:次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(19)(4/5 ページ)
小惑星探査機「はやぶさ2」が地球へ帰還し、予定通り再突入カプセルを回収することに成功した。カプセルからはグラム単位という大量のサンプルも確認されている。まさに「完璧」と言っていい成果だ。本稿では、はやぶさ2の帰還の模様や、再び地球から旅立って挑む「拡張ミッション」、これらの技術がどう生かされていくかについて解説する。
拡張ミッションは時間との勝負に
はやぶさ2が1998 KY26に到着するのは、2031年7月の予定だ。今からじつに10年半後。はやぶさ2は打ち上げからまだ6年だから、今までよりも1.5倍も先という長旅になる。
はやぶさ2はもともと、リュウグウとの往復を前提に設計されている。ここから先はその想定の外であり、各機器がどこまで長持ちするかは未知数だ。現在、はやぶさ2はスイングバイにより、地球軌道の内側に向かっている。熱設計は0.85〜1.41auを想定していたのだが、これよりも太陽に接近するため、熱も大きな問題となる。
これから10年以上も運用できるかどうかは、正直なところ全く分からない。おそらく、何も問題が起きないことはないと思うので、どこまで致命傷を避けられるか、ということになるだろう。ただ、宇宙での長期運用はそれだけで価値があり、耐久試験のデータ取りと考えても非常に貴重な機会だ。
注目したいのは、イオンエンジンが最後まで動くか、ということだ。初号機では、中和器の劣化により、完走できないスラスターが出てしまった。はやぶさ2では、耐久性を向上させたものの、累積運転時間は初号機より短く、本領を発揮する間もなかった。ここからが、改良型μ10の真価を発揮するときだ。
ところで、1998 KY26に到着する5年前の2026年7月には、別の小惑星「2001 CC21」のそばを通過(フライバイ)するというイベントがある。2001 CC21は、L型というちょっと変わり種の小惑星だ。サイズなどはまだよく分からないものの、L型小惑星を探査機で直接観測した例はまだないので、科学的にも、非常に意義が大きい。
はやぶさ2はランデブーを前提に設計された探査機のため、高速にすれ違うフライバイ観測向けの機能、例えばカメラの首を振るような機能は持っていない。秒速5km程度という相対速度で通過するため、どうやって観測するかはこれからの検討事項だが、拡張ミッションでは、まずはこのフライバイを楽しみに待ちたいところだ。
ところで、はやぶさ2のこれまでのミッションは往復の旅だったが、今度の旅は小惑星への片道切符。もう戻ってくることはないのか……と寂しい気持ちになりそうだが、実は2027年12月と2028年6月の2回、はやぶさ2はスイングバイのために地球に戻ってくる。さよならを言うのはそのときでいいだろう。
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