25年以上前の旧式半導体製造装置をIoT化、「5年で約15億円」の効果を期待:スマート工場最前線(2/2 ページ)
京都セミコンダクターは2020年12月10日、半導体の薄膜形成に必要なプラズマCVD装置などをIoT化する「スマートFAB」の取り組みを同年12月4日から開始した。同装置は25年以上前から使用している機器で、IoT化によって稼働状況を監視することなどで延命化し、装置買い替えのコストなどを削減する。
「フロッピーディスクでしか記録できない機器」が現役の現場
IoT化の取り組みは上砂川事業所でも進めている。同事業所では光半導体のボンディング作業に用いるワイヤボンダーを設置したクリーンルーム内に、遠隔監視に対応したパーティクルカウンターと環境センサーを設置した。恵庭事業所と同様、これらのセンサーを通じて取得したデータはMindSphereへと送られて、クリーンルーム内の環境が一定に保たれているかを遠隔から確認できる。IoT化以前は定期的にパーティクルカウンターや温湿度計で室内環境を計測して、手書きで記録を残していたが、この手間を無くす。
恵庭、上砂川両事業所での機器の動作状態や異常値監視の取り組みを通じて、故障時のダウンタイムを従来の3週間程度から4日程度へと削減する効果が見込める。設備のチョコ停時間も従来の15分から5分へと短縮できる。これによって、年間約1億円のコスト削減効果が期待されるという。プラズマCVD装置の延命化効果と併せると、「5年で約15億円に匹敵する収益性改善効果が生まれる」(京セミ担当者)。Raspberry Piなどを用いることで、IoTへの年間投資額は約200万円に抑えた。
京セミ 代表取締役社長 兼 CEOである高橋恒雄氏は一連の取り組みを振り返って、「現職就任後に上砂川事業所を視察した際に、いまだにフロッピーディスクで記録しなければならない機器や、ネットワークにつながらないスタンドアロンな機械が多く現役で稼働していることに衝撃を受けた。こうした現状に危機感を覚えて、解決策としてIoT化の推進を決めて、部門横断のタスクフォースを組織し、どのPCボードを使うか、何のデータを取得するかといったことを決めていった。中小企業であるがゆえに、機動力高く取り組めた面もあったかもしれない。今後も、旧式設備のIoT化を通じて、中小企業におけるIoT化のロールモデルとなるべく取り組みを続けていく」と語った。
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