スタートアップが中小製造業のAI導入をリード、そのために必要なナレッジとは?:中小製造業×スタートアップ(1/3 ページ)
関東経済産業局は、AIやIoTの分野で優れた技術力を持つスタートアップと中堅・中小企業のマッチング事業を2018年から実施している。その2回目となる2019年度のプロジェクト発表会が行われた。
人材不足やグローバル競争の激化により、大手を中心にデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の導入を検討、推進する製造業は増えつつあるが、ナレッジ不足から導入に至っていない中堅・中小企業もまた多い。
経済産業省の地方ブロック機関である関東経済産業局は、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の分野で優れた技術力を持つスタートアップと中堅・中小企業のマッチング事業を2018年から実施している。その2回目となる2019年度のプロジェクト発表会が2020年3月6日に行われた。
発表会は都内で開催予定だったが、新型コロナウイルス(COVID-19)による感染拡大を考慮し、報道陣向けにオンラインで開催された。
生産設備におけるAI導入事例
今回発表された2つのプロジェクトは、いずれも生産設備におけるAI導入の事例となる。
1つ目のプロジェクトは、自動車の塗装プラントや塗装機器の設計/製作や施工を行うトリニティ工業(愛知県豊田市)と、画像解析システムの研究開発を手掛けるヒューマンサポートテクノロジー(茨城県東海村)による、塗装プラント施設内で使用する画像解析システムの開発だ。
2つ目のプロジェクトは、自動車向けの防振ゴムや産業用ゴム部品の製造を行う佐橋工業(愛知県小牧市)と、ディープラーニングなどのAIの開発とコンサルティングを手掛けるグリアコンピューティング(東京都千代田区)による、外観検査の自動化システムの開発である。
両プロジェクトとも、現在は開発/検証フェーズであるため具体的な成果は示されなかったが、2件とも“中小企業側の課題に対して、スタートアップがソリューションを提供する”形になっている。
佐橋工業 社長付の小林淳氏は、「品質向上や価格競争の圧力が年々強まる中、これまでに講じてきたような企業努力だけでは、対応が難しい状況になりつつある」と述べており、人手不足の影響で人材育成もままならない中小企業にとって、省人化と効率化を一手にカバーできる可能性のあるAI導入は、喫緊のテーマであることがうかがえる。
また、中小企業にとって“スタートアップのフットワークの軽さ”も好意的に受け止められている様子だ。トリニティ工業 第2設計部 第23設計室 室長の近藤靖氏は「自社は愛知県にあって、ヒューマンサポートテクノロジーは茨城にあるが、打ち合わせはWeb会議で効率的に進め、開発スピードも早く、全体のコストを下げることができた」と手応えを語っている。
しかし、AIの導入に至っては「発注側(中小企業)のAIに対する理解も深まっているものの、『全く分からない』という企業も多く、スタートアップと発注側の間にミスマッチも発生している」と、グリアコンピューティング 代表取締役社長の田上啓介氏は指摘する。
こうした両社の不幸を減らすためには、どういった事前知識が必要なのだろうか?
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