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スタートアップが中小製造業のAI導入をリード、そのために必要なナレッジとは?中小製造業×スタートアップ(2/3 ページ)

関東経済産業局は、AIやIoTの分野で優れた技術力を持つスタートアップと中堅・中小企業のマッチング事業を2018年から実施している。その2回目となる2019年度のプロジェクト発表会が行われた。

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そのAIは必要か――中小企業が知るべきAIのこと

 佐橋工業とのプロジェクトにおいて、AIの導入支援を担当するグリアコンピューティングは、2019年8月に設立したスタートアップだ。代表取締役社長の田上氏は、東京工業大学院で機械学習を専攻した後、NTTデータとNTTでシステム開発畑を歩んだ後に、AI系スタートアップの設立に参画。その後、現在の会社を興した。

 田上氏は、中小企業が誤解しがちなAI導入のイメージとして、「期待されている担当範囲と、受注側が実際にカバーしている担当範囲とのギャップが大きい」と指摘する。

 発注側である中小企業は、AIの開発だけでなく、分析に必要なデータ収集などを担うシステムの開発やパッケージの導入、ITインフラの開発までを受注側に期待するケースもある。しかし、「AI」を標ぼうするパートナー企業(以下、AI企業)であっても、実際にはAI開発だけに特化していたり、既存の機械学習プラットフォームに接続するためのシステム開発だけに特化していたり、導入コンサルティングだけに特化していたりなどと、AI企業によって対応できる範囲、得意分野が異なるケースが見られる。

AI導入までの企業間の関わりについて(出典:グリアコンピューティング)
AI導入までの企業間の関わりについて(出典:グリアコンピューティング) [クリックで拡大]

 また、AI企業の出自や事業モデルによっても、対応できる範囲は異なる。

 SIerがAIをサービスとして組み込むケースもあれば、クラウド系サービスと連動してAIを活用するシステム系企業と、「ディープラーニングを用いない機械学習」や「ディープラーニングを用いた機械学習」によるAIを開発するAI企業とでは、対応できる業務範囲も異なってくる。

 加えて、特定の業界や分野に特化したAI企業もあり、発注側である中小企業は“どこまでを外部に期待するか”によって、パートナー(AI企業)を見極めて、選択しなければならない。

 例えば、自社にシステム管理部門があり、AIに必要なデータも用意できるのであれば、AI技術に特化した企業に開発を委託する選択肢もあるだろう。しかし、自社にシステム管理部門もなく、これまで目視で判断していたような作業へのAI導入や、そもそもデータ収集が全くできていない企業であれば、AI導入のためのワークフロー構築から発注する必要がある。その場合、AI開発に特化した企業では対応し切れないだろう。

 業務の役割分担と並行して、発注側である中小企業が抱える課題と、それに適応できるAI企業側の技術とのマッチングも重要だ。

 画像認識による異常検知が課題であれば、専用のAIが組み込まれたソフトウェアもあるので、対象のデータとの相性が良ければ開発することなく導入できる。また、AIを使わなくても固定のルールを基に決め打ちで処理することで解決できる場合もあり、AIに必要な学習データを用意しなくても導入可能なケースもある。

 いずれの場合も、開発コストを削減できる可能性はあるが、課題によってはオープンフレームワークの活用や研究論文をベースとした専用のAIを開発する必要も出てくる。そうなった場合、最適な技術を提案できる研究/開発型のAI企業との連携が不可欠だ。

 トリニティ工業は、大規模な塗装プラント設備内に使用する画像解析システムの導入に当たって、SIer系企業や既存の取引先にも相談したが、難易度の高さからスケジュールに落とし込むことができず、断られ続けていたという。

 そんな中、同社と組んだのがヒューマンサポートテクノロジーだ。ヒューマンサポートテクノロジーは、さまざまな業界向けに画像解析を活用したAIを開発する画像認識特化型の企業として知られており、「トリニティ工業から相談を受けた際、エックス線技師用に開発した、撮影する位置決めを正しく行うシステムを応用すれば実現できると思った。レントゲン室とプラント施設では規模や形状が大きく異なるため課題は多いが、トリニティ工業と共同で取り組めば開発できると考え、挑戦した」と、ヒューマンサポートテクノロジー 代表取締役の小野浩二氏は語る。

ヒューマンサポートテクノロジーが今回のプロジェクトで使用した画像認識技術の一例(出典:ヒューマンサポートテクノロジー)
ヒューマンサポートテクノロジーが今回のプロジェクトで使用した画像認識技術の一例(出典:ヒューマンサポートテクノロジー) [クリックで拡大]

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