製造業のIoT活用、大手企業だけでなく中小企業でも拡大傾向:製造業IoT(1/2 ページ)
JMACは「第5回 ものづくりIoT実態調査」の調査報告を行った。2019年に引き続き、IoTで工場の課題解決に取り組む企業が増加した。取り組みは中小企業の間でも拡大傾向にある。
日本能率協会コンサルティング(JMAC)は2020年2月5日、製造業でのIoT(モノのインターネット)導入状況などを調査した「第5回 ものづくりIoT実態調査」の結果報告を行った。この調査は2015年から毎年実施しており、今回は5回目となる。今回の調査では、前回の結果に引き続き、IoTによって現場の課題解決に取り組む企業の割合が増加したことが分かった。ただ、中小企業でもIoTの取り組みが増えるなど、過去の調査結果にはない新しい動きも見られた。
調査ではIoTの活用状況を、デジタル技術による現場の「I.課題解決」、工場のスマート化やサプライチェーンの効率化などに関する「II.最適化」、製品の使用状況をモニタリングして、その結果を別のビジネスに生かす「III.価値創造」の3つのレベルで把握する。これらの区分に基づいて、同社の顧客から抽出した製造業の企業を対象に、2019年12月から2020年1月にかけてWebアンケートを実施し、188件の有効回答を得た。
最適化領域での取り組みが拡大
各レベルの取り組み状況は、「I.課題解決」は「すでに実行中」の回答が40%で、「現在計画中」と合わせると69%に上った。「II.最適化」は48%に達したが、一方で「III.価値創造」の回答は24%にとどまった。
これらの調査結果を過去4年間と比較すると、「I.課題解決」について何らかの取り組みを行っている企業(「すでに実行中」と「現在計画中」)は、2016年は43%、2017年は55%、2018年は64%、2019年は69%となっており、例年通り着実に増加している。また「II.最適化」に取り組む企業も、2016年と2017年は32%、2018年は41%、2019年は48%と増加傾向にある。一方で「III.価値創造」に取り組む企業は、2016年は19%、2017年と2018年は22%、2019年には24%と微増したものの、大きく変化はしなかった。JMAC 執行役員 デジタルイノベーション事業本部 本部長 松本賢治氏は「今回の調査結果で特徴的なのは、例年に比べて最適化に取り組む企業が増加したことだ。背景には、スマートファクトリーの実現を目指す企業の増加があるのではないか」と語った。
売上高100億円未満の中小企業でIoT活用が進展
IoTへの取り組み状況の4年間の推移を企業規模別に見ると、中小企業における取り組みに変化が生じていると分かった。「I.課題解決」に取り組む企業は売上高100億円〜1000億円の中小企業では、2016年は27%、2017年は41%、2018年は55%、2019年は61%と増加傾向にある。一方で、売上高100億円未満の企業は2016年と2017年は33%、2018年は34%とほとんど変化が見られなかったが、2019年は47%に増加した。
この変化の背景について、松本氏はあくまで仮説だと断りを入れつつ「世の中にIoT導入を支援するさまざまなツールが出回り、中小企業でもIoTに取り組みやすい環境になってきたことが要因と推測できる。また、国や地方自治体がIoTやデジタル化の支援に向けた取り組みを行っていることも要因の1つに挙げられる」と指摘した。
なお、売上高1000億円以上の企業では、2016年は55%、2017年は67%、2018年は80%、2019年は82%と例年通り伸びている。
「I.課題解決」への取り組み状況には、業種別の差があるということも分かった。部品や素材をIDで個別に管理しやすい業種ではIoT活用が比較的進みやすいこともあり、電気機械は77%、輸送用機器は86%、機械は81%と多数の企業がIoTの実施、計画を行っている。一方で、プロセス産業である化学は58%、医薬品は46%にとどまり、取り組みが進展していないことが分かった。
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