COVID-19を経ても電子情報産業の世界生産は拡大、JEITAがレポート発表:製造マネジメントニュース
JEITAは2020年12月16日、電子情報産業の世界生産見通しに関する調査レポートを発表した。2020年はCOVID-19の感染拡大によって電子機器需要自体は落ち込んだが、テレワークの普及によるPC需要拡大が後押しとなり、電子情報産業における世界生産額は結果的に増加した。
電子情報技術産業協会(JEITA)は2020年12月16日、電子情報産業の世界生産見通しに関する調査レポートを発表した。2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって電子機器需要自体は落ち込んだが、テレワークの普及によるPC需要拡大などによって、結果的に電子情報産業における世界生産額は増加した。
同レポートは、電子情報産業の世界市場規模や日系企業の世界市場における位置付けの把握などを目的に、2007年から毎年実施している。
テレワーク関連の需要増加で世界生産額は微増
電子情報産業における世界生産額は2020年には約2兆9700億ドル(約307兆980億円)となり、2019年の2兆9300億ドル(約302兆9620億円)と比べると2%増加した。COVID-19の感染拡大の影響で電子機器の需要は急減したが、テレワークやオンライン授業の普及によるPCの需要増加や、データ通信量の急伸を背景としたデータセンター向け半導体需要の拡大などが貢献して、結果的に生産額が増加したとみられる。
2021年の世界生産額見通しは約3兆1800億ドル(約328兆8120億円)と、2020年と比較して7%増加すると予測した。引き続きテレワークやそれに関連するITソリューションの需要増加が期待できる他、自動車需要の回復や5G対応機器の需要拡大、カーボンフリーなど新たな環境規制への対応に起因する電子機器製品の需要増加が見込めるためだという。
品目別に見ると、テレワーク関連の商材を含むソリューションサービスが2020年、2021年ともに過去最高の生産額を更新する見通しだ。データ活用の高度化が需要を下支えするとともに、感染拡大防止の観点からDX(デジタルトランスフォーメーション)のニーズが拡大した。また、電子部品や半導体などの品目も2021年に過去最高の生産額を更新するとみられる。
日系企業の世界生産額は35兆2000兆円となり、2019年と比較して5%減となった。テレワークや遠隔授業の増加でPCやタブレット需要は増加したが、自動車やスマートフォン需要の減少といったマイナス要因を吸収しきれなかった。一方で、2021年の世界生産額は、テレワークに関連するITソリューションの需要拡大が引き続き見込まれる他、5GやEV(電気自動車)で使われる日系企業の部品ニーズが高まるとみられることから、日系企業の世界生産額は36兆3000億円と2020年と比較して増加に転じると予測する。
ITリモートの世界市場規模は2030年に約228兆円に
レポートでは毎年、電子情報産業の世界生産見通しに関する報告と併せて、電子情報産業のけん引役となり得る注目分野を取り上げ、その市場動向の報告や予測を行っている。2020年の調査で選ばれたのは、「ITリモート」だった。JEITA 会長の石塚茂樹氏は「ITリモート」について、遠隔地にいる人々や、人とモノをネットワークを介してコミュニケーションさせる技術だとした上で、「テレワークをはじめ、教育や医療、エンタメ分野でもリモート化の流れは加速し、市場拡大を続けていくだろう。今後もさらに新たなサービスが生まれていくと考える」と指摘した。
レポートでは、ITリモートの世界市場は2020年時点では約57兆4000億円だが、以降年平均14.8%の成長を遂げて、2030年には約228兆3000億円の市場規模に到達すると予測する。また、日本国内の市場も、2020年には約3兆1239億円の市場が、年平均15.2%の成長を遂げて、2030年には12兆8286億円にまで市場規模が拡大するという。
また、石塚氏は世界の通信量見通しについて「これまでも世界全体でデータ通信量は増加の一途をたどっており、2030年ごろに3万EB(エクサバイト)台に到達すると予想していた。しかし、テレワークが急激に広まったことで、3万EBの到達が2年ほど早まり、2030年には約5万8958EBに達すると考えられる。このうち、約半数がITリモートに使用される機器などの通信になるだろう」と語った。ITリモートの利活用分野としては、2030年には「インダストリ」「流通・物流」「テレワーク」などの分野が市場けん引役となるとも指摘する。「規制改革や人材育成が進むことが前提だが、スマートファクトリーなどを実現するロボットや、工場や物流倉庫の自動化を支えるソリューションが今後大きく成長していくだろう」(石塚氏)。
石塚氏はCOVID-19によって電子情報産業全体にも大きな変化が生じているとした上で「JEITAはオンライン会見などに用いる専用のスタジオを新設した他、事務職員へのテレワーク推奨やペーパレス化の推進で、COVID-19感染拡大前と比較して出社率を30%程度に抑えた。先行きの不透明感が社会を覆っている状況だが、今後も感染拡大防止のため、豊かな社会の実現のため、リアルとリモートをバランスよく融合させた取り組みを実現していかなければならない」と語った。
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