中小製造業の生きる道、「研究開発型」で道を切り開く由紀精密の挑戦:JIMTOF2020(2/2 ページ)
2020年11月16〜27日にオンラインで開催された「第30回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2020 Online)」において、主催者セミナーとして由紀精密/由紀ホールディングス代表取締役社長の大坪正人氏が登壇。変革を続ける由紀精密の挑戦の道のりと、ファクトリーサイエンティスト養成などの今後の展望を紹介した。本稿ではその内容を紹介する。
グローバルへの挑戦
由紀精密では、その技術力を生かし、グローバル展開にも積極的に取り組んでいる。2011年には初めて、海外のイベントとしてパリの航空ショーに出展した。その後も同ショーには出展し続けているが、そこで披露した「SEIMITSU COMA」が注目された。
このコマは、精密切削の技術をアピールするために作ったものだが、精密に作られているため、止まっているかのように、安定して回転することが注目された。製造業が技術力を競い、けんかゴマをする「全日本製造業コマ大戦」の第1回大会の優勝ゴマであり、このコマがきっかけで入社した社員もいるという。
さらに同社ではこのコマに続いて「世界最高品質の製品を作りたい」ということを目標に、その思いが最も表現できる製品として、複雑で精密な機構を持つ機械式時計「トゥールビヨン」作りに、独立時計師(時計メーカーに所属せずに、自分でアトリエを構えて時計を独自に製作する人物)らと共同でプロジェクトを立ち上げ、製品化を進めている。
このように由紀精密では、精密加工という技術を軸に、下請けとして大手企業からの発注を待つだけではなく、さまざまな業界に飛び込んでニーズを探り、技術力を生かした製品作りを進めている。同社は大坪氏が入社した2006年以降、売上高が順調に成長しているという。この要因について、大坪氏は「何か1つが当たって急上昇したというよりは、種をまき続けたものが一つ一つ実になって、成長してきた」と語っている。
技術力ある製造業の育成
由紀精密では、これまで実践してきた成功のノウハウを他の製造業へ展開する活動も行っている。由紀ホールディングスという持ち株会社を2017年に設立し、そこでは優れた技術を持つ企業をグループ化し、その技術をさらに光らせていく取り組みを進めている。「製造業で長年培われた要素技術を深く理解し、あらゆる先端産業へ応用することで、製造業とその所有する技術の継続的な発展を促す手法(YUKI Method)・そのプラットフォームを提供する」という概念で推進し、現在13社のグループが所属している。
グループ会社からは、超伝導ワイヤー(明興双葉)などの事例もみられる。この他、大坪氏はファクトリーサイエンティスト協会の代表理事としてモノづくり産業を牽引(けんいん)する人材を育成し、日本の産業競争力の向上への貢献に力を注いでいる。
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