米国病院は新型コロナの院内クラスター対策にDXを導入、働き方改革も進める:海外医療技術トレンド(66)(3/3 ページ)
前回は米国規制当局のDX動向を取り上げたが、米国内の医療業界におけるDXの取り組みは最前線でも加速している。
医療従事者の職場環境の変化も考慮した製品ライフサイクル設計が鍵に
メイヨークリニックの本部があるミネソタ州は、2020年11月23日、日本の厚生労働省の「COCOA」と同様に、Bluetoothを介した近接検知メカニズムと、Google/Appleが提供する暴露通知APIを利用した新型コロナウイルス感染症向け接触追跡アプリケーション「COVIDaware MN」を開発し、正式にリリースしたことを発表している(関連情報)。
また、本連載第59回で取り上げたカリフォルニア州では、接触追跡アプリケーション「CA Notify」を2020年12月10日に正式にリリースすることを発表した(関連情報)。参考までに以下のTweetは、カリフォルニア州知事のTwitter上での「CA Notify」に関する発表に対するApple CEOのティム・クック氏のメッセージである。
どちらかといえば、米国ではフロントの接触追跡アプリケーション導入よりも、医療従事者の現場業務を支えるバックエンドシステム側で、DXをにらんだ業務プロセス改善や人材育成支援の取り組みが先行してきた。
加えて、COVID-19緊急対応下では、食品医薬品局(FDA)による緊急使用許可(EUA:Emergency Use Authorization)権限拡大を受けて、多くの医療機器の申請・承認プロセスが進行していると同時に、それらを調達・利用する側の医療機関でも、デジタル技術を利用した現場の業務プロセス変革や働き方改革が拡大している。
医療機器開発者も、短期的・中長期的に、医療従事者が製品・サービスを利用して業務を行う病院や診療所の職場環境がどう変化していくかを想定しながら、製品ライフサイクルを設計していく必要があろう。
筆者プロフィール
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所、グロバルヘルスイニシャチブ(GHI)等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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