新型ミライの燃料電池システム、乗用車以外への活用も視野に刷新:燃料電池車(2/2 ページ)
トヨタ自動車は2020年12月9日、燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」をフルモデルチェンジして発売した。税込みメーカー希望小売価格は先代モデルからほぼ据え置きの710万円から。優遇税制や補助金を組み合わせることにより、ベーシックなGグレードの場合でおよそ139万5700円の購入補助が受けられる。生産は同社の元町工場(愛知県豊田市)で行う。
先代ミライでは床下と車両前方に分散していた各パワーユニットは小型化し、エンジン車のエンジンのようにフード下のコンパートメントに配置した(駆動用モーターは車両後部に置いた)。今回、新型ミライには小型化と世界最高レベルの高出力を両立した燃料電池を搭載する。燃料電池の出力を制御し、電圧を昇圧するFC昇圧コンバーターは、SiCパワーMOSトランジスタを初採用。燃料電池の高出力化につなげた。また、先代ミライの駆動用バッテリーはニッケル水素電池だったが、今回はリチウムイオン電池を駆動用バッテリーとすることにより、FCユニットの損失を低減する。
燃料電池の出力密度は3.5kW/l(リットル)から5.4kW/lに、最高出力は114kWから128kWに向上している。駆動用モーターの最高出力は113kWから134kWに高めた。
直近でレクサス「LS」の新モデルへの搭載も発表した最新の高度運転支援技術「Toyota Teammate」を新型ミライでも採用する。カメラと超音波センサーを組み合わせて全周囲を監視し、ステアリングやペダル、シフトチェンジの操作を車両側でアシストする駐車支援システムの他、ドライバー監視の下、自動車専用道路で車線や車間距離の維持、車両の認知・判断・操作により分岐の走行や車線変更、追い越しなどを行う「Advanced Drive」の装着車を2021年に発売する。
水素タンクのフィラメントワインディング工程は、設備の動作を高速化することにより加工時間を50%短縮、品質測定の自動化により測定時間を90%削減し、生産時間を従来から66%低減した。これにより、生産性は3倍に高めた。先代ミライで課題となった車両の供給能力を改善する。
FCシステムをトラックやバスなどにも
トヨタは小型高効率で生産性を追求した新型ミライのFCシステムをトラックやバスなどにも活用し、水素利用の拡大を進める考えだ。FCスタックのセル化工程は、熱可塑性シートの採用と順送工法によりセルの生産性を飛躍的に高めた。これまで1セル当たり十数分だった生産サイクルを数秒まで短縮した。
すでに他社との連携も進んでおり、鉄道では、トヨタは東日本旅客鉄道(JR東日本)や日立製作所とともに燃料電池のハイブリッドシステムを搭載した試験車両を製造。2022年3月ごろから鶴見線、南武線尻手支線、南武線で試験走行を行う。
商用車では、トヨタと日野自動車がFC大型トラックを共同開発する。開発するFC大型トラックは、2022年春頃からアサヒグループホールディングスとNEXT Logistics Japan、西濃運輸やヤマト運輸、トヨタの物流業務で使用しながら走行実証を行う計画だ。また、トヨタと日野はFC小型トラックの導入に向けて、セブン‐イレブン・ジャパンやファミリーマート、ローソンと共同で検討を進める。2021年から走行実証を行い、FC小型トラックによる配送の実現可能性の検討や、水素ステーションの配置や車両価格、水素燃料代などの課題を洗い出しに取り組む。FC小型トラックは走行距離400kmを目標に開発を進める。
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