スパコン「富岳」の研究成果から生まれたフェイスシールド、設計データを公開:3Dプリンタニュース
凸版印刷とサントリー酒類は、理化学研究所(理研)のスーパーコンピュータ「富岳」の研究成果を基に開発した「飲食用フェイスシールド」の設計情報をオープンデータとして公開した。
凸版印刷とサントリー酒類は2020年12月8日、理化学研究所(以下、理研)のスーパーコンピュータ(以下、スパコン)「富岳」の研究成果を基に開発した「飲食用フェイスシールド」の設計情報をオープンデータとして公開した。
3Dプリンタと素材があれば誰でも製造可能、完成品の販売も
両社は、理研が富岳を用いて実施した「室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策」の研究成果の一部を活用して、メガネ型で、ワンタッチで口元のシールド部分を開閉できる飲食用フェイスシールドを開発し、その設計情報をオープンデータとして一般公開するに至った(関連記事:「富岳」で新型コロナ飛沫の大量計算を実施、感染リスクはどこにある?)。
ダウンロードサイトには、「設計データ(フレーム)」と「設計データ(シールド)」の他、「材質情報」も掲載されている。設計データ(フレーム)として公開されているファイル形式はSTL、STEP、DXF、PDFで、設計データ(シールド)はAI(Adobe Illustrator)、DXF、PDFからダウンロード可能だ(※1)。なお、シールド部は富岳による検証結果を踏まえ、お椀型のシールド構造を採用している。
※1:設計データをダウンロードするには免責事項に同意する必要がある。
公開されたこれら設計データと3Dプリンタ、必要な素材があれば、誰でも飲食用フェイスシールドを製作できるという。また、同年12月21日からサントリーマーケティング&コマースが運営する「飲食店用品.jp」において、完成品の販売も予定する(2021年1月7日以降、順次発送予定)。
今回の取り組みは、富岳を活用した科学的知見を基に、企業が実効性のある対策を実施するものであり、凸版印刷とサントリー酒類、そして理研は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の克服に貢献するとしている。
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