日系乗用車メーカーの生産・販売で「過去最高」相次ぐ、新型コロナからの回復進む:自動車メーカー生産動向(2/2 ページ)
日系乗用車メーカーの生産が着実に回復している。日系乗用車メーカー8社の2020年10月のグローバル生産実績は、9月と同様に5社が前年比プラスを確保した。このうちトヨタ自動車とスズキは10月として過去最高を更新。世界販売で見てもトヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツ工業が10月の過去最高を記録するなど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で大きなダメージを受けた自動車市場が好転していることが伺える。
マツダとスバル
マツダも着実に回復している。10月のグローバル生産台数は、前年同月比4.5%増の12万7688台で2カ月連続のプラス。国内生産は同2.8%増の8万5095台で、13カ月ぶりにプラスへ転じた。輸出割合が高いマツダでは国内販売に加えて米国市場の回復が寄与しており、北米向け輸出は同42.8%増と大幅な伸びを示した。ただ、欧州は苦戦しており、輸出も同19.7%減にとどまった。車種では「CX-5」の伸びが目立った。
海外生産は前年同月比8.3%増の4万2593台と2カ月連続の増加。メキシコは「マツダ3」が減少したが、「CX-30」の大幅増により同57.6%増と高い伸びを示した。一方、タイはCX-30の純増などプラス要因があったものの、ピックアップトラック「BT-50」の減少により同21.9%減だった。なお、マツダではBT-50の新型車導入に伴い、いすゞ「D-MAX」のOEM(相手先ブランドによる生産)に切り替えるため、自社生産を順次終了するとしている。中国は「CX-4」やCX-5などが増加したが、前年が商品改良した「マツダ6」の生産増があったため、同2.0%減だった。
スバルの10月のグローバル生産台数は前年同月比14.0%増の9万2538台で、4カ月連続で前年を上回った。国内生産は、前年の台風による操業停止に対する反動増で同34.4%増の6万1277台と2カ月連続で増加した。米国販売の好調により輸出が同38.1%増と大幅に伸びたことも要因となった。ただ、海外生産は同12.2%減の3万1261台と5カ月ぶりの前年割れとなった。これは海外唯一の米国工場向けに部品供給の遅れなどが発生したためで、生産へも影響を及ぼした。
ダイハツ
国内と海外で明暗が分かれているのがダイハツだ。10月のグローバル生産台数は、前年同月比3.6%減の14万9414台と8カ月連続で減少した。ただ、減少幅は9月から1.3ポイント改善するなど、着実に回復している。
好調なのが国内で、同22.6%増の9万6245台と2カ月連続で前年を上回るとともに、全ての月を通じて過去最高の台数となった。けん引したのが登録車で、「ロッキー」とトヨタ向けにOEM供給する「ライズ」の小型SUV兄弟の好調の他、9月にマイナーチェンジを実施して商品力を引き上げた「トール」とトヨタ向けOEM「ルーミー」が貢献。登録車生産は同46.1%増と大幅に伸び、10月の過去最高を更新した。軽自動車も「タント」や「ムーヴ」の増加に加えて新型車「タフト」の純増もあり、同12.6%増と2桁パーセント増を確保した。
厳しいのが海外で、海外生産は前年同月比30.5%減の5万3169台と8カ月連続のマイナス。減少幅も9月から8.7ポイント悪化した。マレーシアは政府の売上税減免措置などの政策により同2.1%増とプラスを確保した。深刻なのがインドネシアで、同47.1%減と9月から4.9ポイント悪化するなど、依然として回復の道筋が見えない状況といえる。
日産と三菱自
8社のなかで、グローバル生産台数が2桁パーセント減となったのが日産・三菱自連合だ。日産の10月のグローバル生産は、前年同月比15.1%減の38万8459台と13カ月連続で減少した。ただ、減少幅は9月より4.9ポイント改善した。国内生産は同19.8%減の5万4967台と21カ月連続のマイナス。国内販売は13カ月ぶりに前年実績を上回ったものの、三菱自からOEM供給を受ける「ルークス」の好調やタイから輸入する「キックス」の純増などが主な要因であり、日産の国内生産には貢献していない。また、米国の販売低迷などで2桁パーセント減となった輸出の低迷も影響を及ぼした。
海外生産は前年同月比14.2%減の33万3492台。中国は「シルフィ」の好調で、同10.5%増と3カ月ぶりにプラスへ転じた。ただ、主力の北米は同23.6%減と低迷。メキシコは同6.1%減と回復傾向を示したが、米国が「ローグ」の新型への切り替えを実施したことで同39.7%減と大幅に落ち込んだ。9月はプラスだった英国も同6.9%減と減少に転じた。
日産以上に回復が遅れている三菱自は、10月のグローバル生産台数が前年同月比33.0%減の7万7903台と14カ月連続で減少した。台数でもスバルを下回る最下位が6月から続いている。ただ、減少幅自体は9月より6.9ポイント改善した。国内は「eKスペース」の新型車効果があったものの、「eKワゴン」や「アウトランダーPHEV」など主力モデルの販売が大きく減少した他、輸出も同46.3%減と低迷。その結果、国内生産は同21.7%減の3万9718台と7カ月連続のマイナスだった。減少幅は9月から7.7ポイント改善した。
海外生産はさらに厳しく、前年同月比41.7%減の3万8185台と13カ月連続のマイナス。9月より6.3ポイント改善したが、依然として大幅な前年割れが続いている。主力拠点のタイは同40.0%減で、9月より5.1ポイント改善。市場回復が進む中国は同47.5%減と半減近い落ち込みを見せている。
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