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インタビュー

「歩いて測定」で作業を大幅効率化、ウェアラブル型の3D計測デバイスの実力スマートファクトリー(3/3 ページ)

2020年9月末、ウェアラブル型の3D点群計測用デバイス「NavVis VLX」が発売された。従来の計測デバイスと違うのは、計測者がデバイスを身に付けて、実際に施設内を歩き回りながら計測を行う点だ。ウェアラブル型を採用することにはどのようなメリットがあるのか。NavVis VLXの国内販売を担う構造計画研究所の担当者に話を聞いた。

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取得したデータはブラウザ上で手軽に確認

 取得した3D点群データや画像は、専用アプリケーション「NavVis IndoorViewer」(以下、IndoorViewer)を使うことで、Webブラウザ上で確認できる。IndoorViewerでは測定場所の360度パノラマ画像を、グーグルが提供する「Google MAP」の一機能である「ストリートビュー」のような形で確認できる。画面横のアイコンから3D点群データとの切り替えも簡単にできる。データ共有は、専用のURLを発行する形で行える。

 「VLXの頭頂部カメラで撮影しているため、画像内に測定者自身が映り込む心配がない。パノラマ画像はグリップ横にあるボタンを押せば簡単に撮影できる」(松山氏)

IndoorViewerで表示されるパノラマ画像(左)と3D点群データ(右)[クリックして拡大]

2つのLiDARで高精度の自己位置推定も実現

 VLXのもう1つの特徴が、LiDARを2個搭載している点だ。VLX装着時正面に位置するLiDARは3D点群データ取得を、頭頂部のLiDARは自己位置推定用のデータ取得の役割をそれぞれ担う。これによってより、高精度な3D点群データの取得だけでなく、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いた自己位置推定が高精度で行えるようになったという。

頭頂部(左)と装着時正面(右)にLiDARをそれぞれ搭載している[クリックして拡大]

 屋内測定時にはGPSの電波が計測デバイスまで届かない可能性があるため、デバイスに自己位置推定の仕組みを組み込む必要がある。正確な自己位置情報が取得できれば、装着者が移動している間でも高精度の点群データを取得しやすい。また、屋外測定時でもGPSの位置誤差や通信不良の発生可能性を考慮すると、GPSに頼らない自己位置推定の仕組みが用意されていることが望ましいと松山氏は指摘する。

 「実のところ、正面のLiDAR1台だけでも自己位置推定は不可能ではない。ただ、それだと垂直方向にしかレーザーが出せなくなる。壁面にあまり特徴がない、一本道の通路を通過する際などには奥行きが把握しづらくなる。一方で、水平方向にレーダーを飛ばせる頭頂部のLiDARがあれば、より高精度な自己位置推定が可能だ」(松山氏)

ダッソー・システムズとの連携も視野に

 高根氏はVLXの国内展開について、既に一定程度の手応えを感じていると語る。

 「VLXの前世代機であるM6も当社で販売展開しているが、引き合いの多さでいうとVLXはM6の2〜3倍はある。製造業からの引き合いも多いが、最近では建築やインフラ業界から相談を受けることもある。建築関係ではBIM(Building Information Modeling)への関心度が高く、既設の建造物内スキャンなどの用途で使いたいという顧客は多い」(高根氏)

 また、NavVisの本社ではVLXなど同社のスキャナーを用いた、保守点検用ソリューション開発の取り組みなども新たに進めているという。一例として松山氏が紹介したのが、ダッソー・システムズが展開する「3DEXPERIENCEプラットフォーム」との連携を通じたソリューション開発の事例だ。

 「NavVis VLXで施設内を撮影して、各設備のセンサーデータや、3DEXPERIENCEプラットフォーム上で管理しているMES(製造実行システム)とひも付けて連携する。これによって、異常発生時にはIndoorViewer上でアラートを出した工場内設備を確認して、『どのような形をしている機器なのか』などをチェックして対応を早期に検討できるようにする。IndoorViewerのパノラマ画像を見れば、問題が発生した機器の周辺にある空調システムや配線も併せて確認できるので、具体的な問題解決策を講じやすくなる」(高根氏)

 今後は、固定式の計測デバイスを使っている製造業や建設業などの顧客を対象に、VLXへの機器リプレイス需要を取り込みつつ製品展開を行っていく予定だという。

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