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ウェアラブル端末とモノのインターネットは「現場」の救世主となるか?【前編】現場革新 次の一手(1/3 ページ)

製造現場や保守現場、建築現場など、多くの業種においてさまざまな「現場」が存在しているが、その現場が今“悲鳴”を上げていることをご存じだろうか。その救世主として今急速に注目を浴び始めたのが、ウェアラブル端末とIoT(モノのインターネット)だ。本稿では、前編で「現場」の現状となぜウェアラブル端末に注目が集まるのかについて、後編でICTを活用した「現場」の将来像について解説する。

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 今、日本の「現場」は大きな問題を抱えていることをご存じだろうか。製造業をはじめとし、建設業界、エンジニアリング業界、医療業界、IT業界などで深刻な人手不足に陥っているのだ。人口減少による労働人口縮小の影響とともに、東日本大震災の復興に関連する需要や、2020年の東京五輪開催に伴う建設需要増大などがあり、多くの「現場」が疲弊している。その救世主としてここ最近、急速に注目度を高めているのが、ウェアラブル端末IoT(モノのインターネット)だ。

 なぜ、これらが注目を浴びているのだろうか。本稿では、「現場」が置かれている現状を読み解くとともに、ウェアラブル端末とIoTがどのように役立つのかを解説する。まず、【前編】の今回は、「現場」の現状とウェアラブル端末との関連性について紹介する。



“日本の現場”は疲弊している

 今、日本の「現場」は大きな問題を抱えている。製造業では図1の通り、人口分布の変動に伴う若年者不足の影響を受け、10年前と比べて大幅に人員数が減少している。特に「25〜34歳」の人数は「55〜64歳」に次いで10年前との乖離(かいり)が大きく、製造業における“若手”の渇望を示している。一方で熟練者は定年を迎え、その数はどんどん減っている。今まで長年培われてきた技を伝承するという意味でも、大きな問題を抱えていることが見て取れる。

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図1:2005年と2014年における製造業の就業者年齢分布(出典:総務省 労働調査年報)(クリックで拡大)

 一方、日本の製造業の現場を考えるとき、その場は既に日本国内だけにとどまるものではない。以前に筆者が執筆した「“真のグローバル開発体制”を実現するには何が必要か」でも示した通り、“日本企業の現場”は既に海外である場合が増えているのだ。現場がグローバル化することで、技術の伝承はますます困難になる。現場には「テレビ電話会議システム」などの便利な遠隔コミュニケーションツールも存在しない。結局現場のレベルを高めるためには「同じ場所にいて指導する」しかないのである。しかし熟練工が減っていく中、世界中のあちこちの現場に送り込むわけにはいかない。

 つまり、現場作業者に負担が掛からない方法で、いかにして遠隔地の現場同士をつなぐコミュニケーションを可能にするかということが重要な問題となっているのだ。そこにICTの活用の余地があるのではないか、という点を考察するのが、本稿の狙いの1つである。

 なお、ICTを活用した遠隔地コミュニケーションによって“全ての”技術伝承問題が解決されればいいが、そんな簡単なものではない。例えば、機械でも不可能なミクロン単位の金型精度を確保する磨きの技術を伝承するに当たって、遠隔地コミュニケーションはほぼ無力だろう。それでも、さまざまな“形式知”として構成されるノウハウの伝承には一定の効果を発揮すると筆者は考えている。

 一方、現場には「技術の伝承」の他に、もう1つ大きな課題がある。現場の作業がその場以外では「見えない」ということだ。現場では、現物を加工し、現物を組み立て、現物を検査し、製品として出荷しているが、これらの作業の内容を、その場にいない人に伝えるためには、これらの動きの結果をデータ化するなど一定の指標で「見える化」を行う必要がある。そのため一般的な製造業の現場では、作業した機械から実績値を取ったり、人間の手で実績を収集したりして、システムに入力している。しかしこれはリアルタイム性や正確さに欠けることがあり、また作業負担も大きなものだ。

 これらの課題を解決する新たなきっかけを生み出すと期待されているのが、ウェアラブル端末と、IoT技術であるというわけだ。

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