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ヘルスケア向けウェアラブル機器、“価値の創造”はまだこれから製品は百花繚乱でも(1/2 ページ)

ヘルスケア向けのウェアラブル機器は勢いに乗っているように見える。確かに、製品は大量に市場に投入され始めてはいるが、「本当に価値を提供できるサービスにはいきついていない」という見解もある。

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ウェアラブルは花盛り、「でも何に使うのか」

 ヘルスケア向けのウェアラブル機器市場は、著しい成長が期待されている。2014年1月の「2014 International CES」(米国ラスベガス)や、同年2月の「Mobile World Congress(MWC)2014」(スペイン バルセロナ)でもさまざまな製品/開発品が展示された。その後、Appleが「iOS 8」の新機能としてヘルスケア管理アプリ「Health」を、Samsung Electronics(サムスン電子)はヘルスケア向けリストバンド「Simband」を発表している。AppleのHealthは、それ自体はウェアラブル機器ではないが、ネットワークにつながるヘルスケア/フィットネス製品のデータを一元管理するので、明らかにヘルスケア/フィットネス向けのウェアラブル機器を意識したものである。



オムロン ヘルスケアの志賀利一氏

 まさに“花盛り”という印象を受ける同市場について、「TOPPERS カンファレンス 2014」(2014年6月24日)の特別講演に登壇したオムロン ヘルスケア 技術専門職の志賀利一氏は、「ヘルスケア機器の市場における戦いの図式が変わってきている。これらの機器がインターネットに接続されるようになった時点で、通信事業者が入ってくるからだ」と述べている。さらに、ソフトバンクが3G通信に対応した体組成計を発売するなど、通信事業者がヘルスケア製品を販売する事例も出てきている。

 だが、ウェアラブル機器において「ビジネスが成立しているかというと、そうでもない」と志賀氏は述べる。小型の端末や機器を作る半導体技術は進んでいて、委託工場も多数あるので、メーカーは自社で工場を所有していなくても、いくらでもウェアラブル機器を製造することができる。現在は、「こんなウェアラブル機器も作れますよ」と次々と提示されているような段階で、「よくよく考えてみると、実は“何に使えるのか”というのが大きな課題として残っている」と志賀氏は指摘する。健康管理に必要な情報というのは人によって異なるからだ。健康な人でも、たまに頭痛がある、疲れやすい、ひざが痛いなど、悩みは千差万別である。高血圧や糖尿病という生活習慣病は、血圧や血糖値を計測すればいいのだが、患者なのか患者予備軍なのか、薬を飲んでいるのかいないのかなどによって、必要な指標(パラメータ)は違ってくる。

「Simband」は「血圧計」にはなり得ない

 さらに、ウェアラブル機器で測定したデータを、疾病の診断や治療の経過観察に使うパラメータとして使用できるかというと、そうではないケースも多い。例えばSamsungのSimbandは、血圧を測定できるとうたっているが、「サムスンが何十億円を投資してSimbandを開発したとしても、Simbandは“血圧計”には絶対ならない」と志賀氏は強調する。生活習慣病などの診断材料として使う血圧の値は、上腕部で計測することがゴールドスタンダード*)であるからだ。手首でも測定できるが、測定時の手首の高さによって測定誤差が生じたり、動脈の硬化が進んでいる場合は上腕部で測定した場合と値が大きく違ったりすることもある。医療情報として使える血圧の値を得られなければ、「それは血圧計とは呼べない」(同氏)。

*)最も信頼性が高く、疾病の診断などの「決め手」となるもの

 「百人いれば百通りあるのが、健康上の悩みだ。何を測定して何をコントロールすればいいのかが全て違う」と志賀氏は指摘していて、ヘルスケア向けのウェアラブル機器をビジネスとして成り立たせる難しさもこの点にある。実際、複数のメーカーが個人を対象にしたパーソナルヘルスケア向けのサービスを展開しているが、大きな成功には至っていない。


パーソナルヘルスケア向けのサービスで大きく成功しているものは、まだない(クリックで拡大)

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